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刻々と変わりゆく社会に
適した仕組みを

海洋工学部 流通情報工学科  黒川久幸 教授


刻々と変わりゆく社会に
適した仕組みを

海洋工学部 流通情報工学科  黒川久幸 教授

わたしたちの周りには、たくさんの商品があふれています。
たとえば、スーパーに行けば、いつでも買いたい商品を購入することができますよね。
しかし、それらは、ほとんどの場合私たちの目の前で製造されているわけではなく、 日本国内外の工場などで製造され、物流により私たちのもとに届きます。
物流は、私たちにとってなくてはならないものです。
そんな物流の全体像やロジスティックスについて学ぶことができるのが、東京海洋大学流通情報工学科。
黒川先生は、物流企業など実際の作業現場を分析し、より適した仕組みを見出す研究を行なっています。

黒川教授

略歴

黒川 久幸(くろかわ ひさゆき)
流通情報工学科部門所属。
国立弓削商船高等専門学校から東京商船大学に編入、
東京商船大学大学院を修了後、東京大学大学院に進学。
1996年東京商船大学助手に就任、助教授を経て
2003年大学の統合により東京海洋大学助教授に就任、
2011年より現職。
2018〜2021年まで東京海洋大学理事(産学連携担当)

Q どんな授業を担当していますか?

物流管理工学(流通情報工学科 2年次)を担当しています。
(その他:作業管理工学(3年次)、流通情報工学実験、作業管理工学、物流シミュレーション工学、など)
たとえば、爆発的な人気商品を製造・販売していても、商品が売れなくなったときに大量の在庫を抱えてしまえば、大幅な赤字となってしまいます。
経営という視点では在庫管理の良し悪しが、業績を左右することがあるという事例です。
そこで物流管理工学では在庫管理の基本である、何を(商品)、何時(発注時期)、どれだけ(発注量)発注すればよいか、ついて決定方法などを学びます。
Q なぜ、東京海洋大学に流通情報工学科があるのですか?

東京海洋大学の前身である、東京商船大学では航海士や機関士※の育成を行ってきました。
船舶による物流(海運)は、なくてはならない輸送手段です。
特に島国である日本では、輸出入製品のほとんどは船舶が使われていますが、船舶による輸送も無限にはできません。
必要なときに、必要な分を必要な場所に運ぶ必要があります。
そのためには情報を正確に、早く伝達し共有する技術も重要になります。
このような背景から、大学にロジスティクスや流通、情報を学び研究する学科である、流通情報工学科が生まれました。
日本国内では物流やロジスティクスを専門に学べる学科はあまり多くなく、珍しい学科だと思います。大正2年 天測 大正2年 天測
Q どんな研究をしているのですか?

物流業界を中心に、実際の作業現場で取得した様々なデータに基づいて、どのよう分析をして、どのような基準で判断すれば、誰でも現場改善や効率化を実現できるかを目標に、その分析方法や基準の設定方法、全体の仕組みつくりの方法を研究しています。
効率化と聞くと、経費削減、人件費の削減、と考えられるかもしれません。
しかし、本当に大切なのは、効率化し無駄を省くことで生まれた余裕(資金や人材)を今まで使えていなかった場所や事柄に投資できる環境を作り、企業にとってプラスになる挑戦をできるようにすること。
1億円の売り上げがあり、そのうち1%が利益、という会社があったとしたら、倍の利益を出すためには、単純に考えると2億円の売り上げを目指すしかないですよね。
でも本当は、視点を変えて1%分の無駄な経費を見つけて削減すると、利益を倍にできるのです。
全体を見て、今必要な改善は何かを誰でも判断できるようになれば、社会は良くなっていくのではないかと考えていて、そのお手伝いができればと思っています。
Q 実際の作業現場ということは企業の方と一緒に研究をするのですか?

そうですね、テーマとして実作業を扱っているので、契約を結んで企業さんにデータを提供いただいて、 学生さんと分析したりすることもあります。色々な企業の担当者の方と連携し、コミュニケーションをとりながら研究を進めています 。
最近では物流企業だけでなく、メーカーなども物流現場の改善に力をいれているので、幅広い業種と協同しています。
Q 研究者になろう、と思ったきっかけは?

わたしは、元々は船乗りになりたくて、東京商船大学に入りました。瀬戸内の島で生まれて、周りはみんな船に関わる仕事に携わっていました。祖父も船大工。
自然と進路を決めていましたね。
ただ、大学院に進学したときに宅配便をテーマに研究をして物流の仕組みに興味を持ちました。
宅配便ってものすごく遠い場所でも安い値段で物を送ることができると思いませんか?
もちろん宅配便を隣町に運ぶというだけなら、車ですぐですし、そんなにお金はかからなそうですよね。
しかし、遠くの場所に運ぶ場合も考えると工夫が必要になります。
宅配便は、一度集積所に宅配物を集めて同じ方向に届けるものをまとめてから運ぶ、という「仕組み」がポイントになのです。
このような仕組みに興味を持って、物流の研究をするようになりました。
Q 2030年に向けて、これから入学してくる学生さんとどんな研究をしたいですか?

物流業界に限らず、今社会が大きく変わっていると感じています。
特に物流業界は、今まで物流の効率化を真剣に図って来なかった部分もあり、勘と経験と度胸(KKD)で回っているところがあります。
だから、これからの社会に合わせ、改善できるところ、変えられるところがたくさんあると感じています。
さらに人手不足により、物流現場の効率化が迫られています。
また、日本の物流は、他の国比べて繊細で複雑な部分が多く、適した効率化のためには、全体を正確に把握し、様々な点で工夫が必要だと思います。
だから、もし流通情報工学科を卒業して物流の知識を持った人が製造現場、メーカーから小売店まで広い分野に就職し、活躍できると思っています。
実際、少しずつですが別分野に就職した卒業生同士が連携し、改善に向けてのプロジェクトを始めようとする動きもあります。
これから入学する学生さんにもぜひ、 一緒に刻々と変わりゆく社会に適した仕組みつくりの仲間になってほしいです。

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