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海からの声を伝える⼈々

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原動力はなぜだろう?
という気持ちと海の生きものが持つ力

海洋生命科学部 海洋生物資源学科 矢澤良輔 准教授


原動力はなぜだろう?
という気持ちと海の生きものが持つ力

海洋生命科学部 海洋生物資源学科 矢澤良輔 准教授

わたしたちの周りには、たくさんの商品があふれています。
みなさんは養殖(人工的に飼育)生産された魚を水族館やペットショップ、魚屋さんなど生活のなかで見る機会も多いのではないでしょうか。
一方で、絶滅に瀕した魚や、飼育が難しい魚など、人工的に飼育し、産卵させて種苗(育てるための稚魚)を得ることが困難な魚もたくさんいます。
そのような魚の卵や精子の元となる細胞を他種の魚に移植し、他種の魚の生殖巣を借りて次世代を作るというのが代理親魚技術です。
矢澤先生は、代理親魚技術を活用して、マグロなど海産魚の種苗を安定的に生産する技術について研究しています。

矢澤先生

略歴

矢澤 良輔(やざわ りょうすけ)
海洋生物資源学部門所属。
東京水産大学大学院修了後、ビクトリア大学(カナダ)、
東京海洋大学にて博士研究員として勤務後、2011年に東京海洋大学助教に。
2016年より現職。水産学博士。

Q どんな授業を担当していますか?

比較生理学、比較生理学実験などで魚の解剖を担当しています。
海洋生物資源学科の1年生は、フレッシュマンセミナーという実習で水圏科学フィールド教育センター・館山ステーション(千葉県、館山市)を見学するのですが、その案内や実習中の解剖も担当しています。
館山ステーション 館山ステーション
Q いつもはどこで研究していますか?

研究室は東京海洋大学の品川キャンパスにありますが、マグロの代理親魚技術に使う魚の飼育や実験は、館山ステーションで行っています。
海の近くにあり、海水を飼育に利用できたり、回遊魚用の水槽や生まれた仔稚魚を育てるための設備が整っていたりと、研究に打ち込める環境です。
品川キャンパスで行う実験もあるけれど、館山ステーションでしかできないことも多いです。
Q 東京水産大学(東京海洋大学の前身)に入学を決めた理由は?

海の生き物に興味があって、研究者になりたいと思いました。
あとは父の影響かな。父も研究者で、仕事で様々な場所にサンプリングに行く姿を見ていて、たまに連れて行ってもらうこともあって。大学進学を考えたときに調べていて、東京水産大学(当時・現東京海洋大学)を見つけて受験しました。
Q どんな学生時代を送りましたか?

実験実習の授業がとにかく面白かったことを覚えています。
色んな先生が今よりももっと自由に、そして多様性のある授業をしていたけれど、それぞれ今もためになっているなと思いますね。あとは部活(バスケ部)に打ち込んでいました。結構真面目な学生だったかなと思います。
品川キャンパス 品川キャンパス
Q 学生時代はどんな研究をしていましたか?

学生時代は、ゲノム科学研究室という、遺伝子工学的な手法を駆使してワクチン開発をしたり、免疫について研究したりする研究室で学んでいました。でも、4年生で研究室に入った当時、研究室の誰もやっていない「トランスジェニック(遺伝子導入)魚」を研究したい!と自分から言ってトランスジェニックを使った病気に強い魚の作出をテーマに研究していました。所属していた研究室にトランスジェニック魚の研究をしている先輩がいなかったため実験を進めるのは正直大変だったのですが、指導教官の青木宙教授(現名誉教授)、廣野育生教授が、私のやりたいことを認めてくれて、その分野で最先端のたくさんの先生方から学べる機会を与えてくれたので、研究を進めることができました。
Q 研究室で誰もやっていない実験系を組み立てるのは大変だったのでは?

研究室の先生が他の研究室の技術を学びに行かせてくれ、結果的にトランスジェニック技法に限らず、研究室外のノウハウや知識を吸収できたので、とても感謝しています。
けれど、確かに、そう。研究室で先輩たちがやっている実験を教えてもらいながらやるよりも、失敗したり、工夫したり……もう、失敗はたくさんしています。
ただ、根底に「新しいことが好き」というのがあって、色んなことに挑戦してみたいという気持ちの方が強いかな。失敗から学ぶことも多いし、今も研究で数え切れないくらい、たくさんの失敗をしていると思います。
Q 今はどんな研究をしているのですか?

今は、代理親魚技術という技術を使って、良い種苗、たとえば美味しい、育てやすいなど特長のある種苗を安定的に生産するための技術を開発しています。それから、マグロの代理親魚技術の開発で代理親として選んだマサバとゴマサバにも注目して研究しています。
マサバとゴマサバって見た目はすごく似ていて、生息している場所も産卵時期も重なっているのだけど、マサバとゴマサバの子どもはほとんどが次世代を作れない不妊になります。
だからマサバとゴマサバは、混ざり合うことなく、自然界で別の種類のまま存在しています。
もちろん他の魚でも掛け合わせると不妊になる魚の例は他にもあるんです。
ただ、研究していて、たまにマサバとゴマサバの子どもなのに不妊にならない個体がいる、ということに気づいて、なぜだろう?と。
今は日本中のサバを集めてこの謎解きに挑戦しよう、としているところです。
Q 2030年に向けて、これから入学してくる学生さんとどんな研究をしたいですか?

今私が行っている研究はこのまま続けていけば、たとえば安定的なタンパク源の生産や持続的な海洋資源の利用に役立つのかなと思っています。
ただ、これから入ってくる学生さんとは、さらにその先、50年後、100年後の課題や未来に必要な技術を一緒に考えて、それを解決する種を作りたいな、と思いますね。
きっと自分には無い発想を出してくれると思うし、それが新しい技術を生むかもしれない、と思うと楽しみです。 品川キャンパス正門 品川キャンパス正門

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