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海からの声を伝える⼈々

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物質の動きを追い続けて、見えてくる。
今の海、これからの海。

海洋資源環境学部 海洋環境科学科  神田穣太 教授

物質の動きを追い続けて、
見えてくる。
今の海、これからの海。

洋資源環境学部 海洋環境科学科
神田穣太 教授

「海洋学:Oceanography」という学問は、海洋を研究対象とした自然科学のひとつの分野です。
海洋学を勉強するためには、海水の動きを知るための「物理学」の知識、物質循環を知るための「化学」の知識、海洋に生息する動植物を知るための「生物学」の知識、そして地形や地質を理解する「地学」の知識など、複合的な分野についても知る必要があります。
神田先生は、化学の視点、具体的には海洋での栄養塩※の動きを研究することで、海洋の解明に挑んでいます。

※ 栄養塩:窒素、リン、ケイ素など、植物プランクトンや海藻にとって必要で、海水では不足がちな元素の無機塩類

神田教授

略歴

神田 穣太(かんだ じょうた)
学術研究院 海洋環境科学部門所属。
東京大学理学部卒、同大学院修了後、東京大学海洋研究所(助手)、
静岡大学(助教授)として勤務後、
2000年に東京水産大学(現 東京海洋大学)に助教授として着任。
2008年から現職。理学博士。
2015年〜2021年まで副学長(研究・大学改革担当)も務める。

Q どんな授業を担当していますか?

地球科学概論Ⅱ(海洋環境科学科・海洋資源エネルギー学科 2年次、分担)、化学海洋学(海洋環境科学科 3年次)を担当しています。
「化学海洋学」というのは、化学の視点から見た海洋に関する授業です。海洋環境には多くの化学物質が様々な形態で存在しています。
これらの物質は海洋全体、ひいては地球規模の物質循環において重要な役割を担います。
この授業では、海洋における化学物質の分布や挙動を中心に学ぶことができ、海洋環境を知る上で重要な基盤となる知識を習得できます。
Q 海洋資源環境学部、海洋環境科学科はどんな学科ですか?

海洋環境科学科は、海洋および海洋生物に関わる基礎科学(物理系、化学系、生物系、地学系)を総合的に学び、海洋環境・海洋生物の調査・解析・保全・利用のための科学と技術へ発展させることを目指す学科です。
一番大きな特長は、学科に海洋学を物理系、化学系、生物系、地学系、全ての視点から研究する教員がそろっている、ということ。
最初に言ったように、海洋を理解するためには、複合的な学問の知識が必要になります。
これは、言うのは簡単だけれど、実際学ぼうと思ったらとても難しいことです。
しかし、実際に生物であるプランクトンの研究をしていたら物理的な海流の知識や化学的な物質循環の知識が必要になることが多々あります。
そんな時には、学科内の様々な分野の先生に相談できるので、非常に心強いです。
日本国内で、ひとつの学科に多様な視点から海洋を研究する教員がいる大学は他に例がないんじゃないかな。そのくらい、海洋学を学ぶには適した学科だと思います。
Q どんな研究をしているのですか?

長年研究をしているので、様々な海域の物質循環についての研究をしてきました。
南極、亜熱帯、もちろん東京湾など日本周辺も。そのなかで今、改めて面白いと感じるのは「東京湾」かな。
東京海洋大学には、青鷹丸(せいようまる)という研究船があり、この船で月に1回東京湾の観測調査をしています。
私が東京水産大学(現・東京海洋大学)に赴任した時には、すでに継続的な調査が行われていて、それを引き継ぐ形で20年にわたって、月1回の栄養塩の調査を続けています。
栄養塩の調査開始は1989年、もう30年以上になりますね。継続的なデータから見えてくることは本当に色々あって、調査データから、東京湾は栄養塩が減ってどんどん綺麗になっていることがわかります。
でも、まだ課題もある。今後さらに調査を続けていくことで、目には見えない東京湾の変化する様子を追っていくことができるでしょう。
青鷹丸 青鷹丸
Q 船に乗っての海洋調査・研究は大変ですか?

一度乗ったら、降りられないからね。たとえば、海水を採水して分析する研究をしようと思って乗船したのに、採水に必要な道具のどれかひとつでも忘れてしまったら−−?
もう何もできない。取りに戻ることも、船を降りることもできない。
そう言う大変さはあると思います。特に南極への航海など、長期間に及ぶものはなおさら、念密に計画を立てて準備をしなくてはいけません。
実験計画をしっかり立てて、必要な機材や試薬をリストにする。
実験に使う試薬も重さを測って必要な分だけ小分けにする。
船上で分析するもの、下船してから分析するものをあらかじめ決めておき、船で分析するための機器を積み込む。
乗船中だけでなく、準備や後片付けの時間も含めた期間が研究期間。
特に長い航海は1年のうちに何回もできるわけではないので、忘れ物ややり残しがないよう、より緊張感をもって準備します。
ただ、逆に準備万端に船に乗ったら、あとは計画通りにやるだけ。
船の中では他の研究を手伝ったりして、他の機関の研究者と交流を深める機会もあり、とても楽しい時間です。
下船後の後片付けはまた大変だけれどね。おかげで引越しの荷造りは得意になりました。
Q 研究者になろう、と思ったきっかけは?

大学時代は、理学部生物学科植物学コースで学びました。
そう、化学科ではないんですね。なぜ、植物学コースだったかというと、生態学を学びたくて、植物生態学を研究している先生がいたから、という経緯です。
元々、生態系の中での物の動きに興味があって、学部から大学院に進むときに、海洋の物質循環の研究を始めました。
Q 物の動き(物質循環)の視点で見た海の魅力はなんですか?

物質循環の視点でみると、海は細かい部分まで含めて、非常によくバランスをとりながら、とてもエレガントに動いています。
研究を通して海がまるで計算されて作られたひとつのシステムのように動くさまを知ることができるのは大きな魅力です。
海洋研究は、2−3年の調査で大発見がある、というような研究分野ではありません。
長期間、学生さんも含めて、何人もの人が関わってデータを収集し、蓄積するから見えてくるものがあります。
学生さんによっては卒業してから数年後、大発見につながるデータに関わっていたとわかることもあります。
先輩から後輩にデータを引き継いでいきながら、調査をし続けること、それはすごく根気がいることだけれど、とても大切なこと。
卒業した学生のなかには、たった数年でもこの調査に関われてよかった、と言ってくれる学生もいて、そんな言葉を聞くと嬉しいですね。
Q 世界中の研究者と共同研究することもありますか?

海は世界中の国々とつながっているので、もともと国際性の高い研究分野です。
1960年代後半には、すでに観測データを国を越えて共有する仕組みがあったほど。
本学の教員が他の国の船に乗って研究をしたり、反対に外国で研究する研究者が本学の船に乗ったりすることもあります。
日本で研究していても常に海外の研究者と自然と交流していますね。
Q 2030年に向けて、これからどんな研究をしていきたいですか。

東京海洋大学では、「海を知り、海を守り、海を利用する」をモットーに多種多様な研究が行われています。
なかでも「海を利用する」研究は注目されることが多いと思います。
一方で、「海を知る」ための研究を続けることも、とても重要。国連海洋科学の10年※ でもデータの重要性について言われているように、海を把握するための基礎的な研究によって収集したデータというのは、持続的な海洋の未来のためになくてはならないものです。
先輩たちが大切に引き継いできたデータのバトンを、これからの学生さんに渡しながら、海洋の研究に携わることができればいいなと考えています。

※ 国連海洋科学の10年:2017年国連総会により採択された取り組み。2021年から2030年までの10年間「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年」を実施し、海洋科学の推進により、SDGs14番「海の豊かさを守ろう」をはじめ、関連するSDGs の達成に貢献するために集中的な取組みを行うもの。
具体的には、
・海洋の持続的な開発に必要な、科学的知識、基盤、パートナーシップの構築
・海洋に関する科学的知見、データ・情報を海洋政策に反映し、全ての持続可能な開発目標達成に貢献すること
を目的としている。
https://en.unesco.org/ocean-decade
https://www.mext.go.jp/content/1422631_1.pdf

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