logo

海からの声を伝える⼈々

海からの声を伝える⼈々

interview_14

  • 9ロゴアイコン
  • 14ロゴアイコン

必要か理解できなかった公式が、船舶という視点で見てみると、
キラキラした公式に早変わりした

海洋工学部 海事システム工学科 西崎 ちひろ 准教授

必要か理解できなかった公式が、
船舶という視点で見てみると、
キラキラした公式に早変わりした

海洋工学部 海事システム工学科 
西崎 ちひろ 准教授

今、この瞬間も、数えきれないほどたくさんの船が世界中の人々の生活を支えるために、たくさんの貨物(原料、食品、日用品など)を運んでいます。巨大な船舶は、数十名の航海士や機関士などの船員さんが関わり、24時間体制で運航します。海事システム⼯学部⾨の西崎ちひろ先生は、先輩・後輩が乗っている船舶が、いつも安全に航海できるような技術の開発を目指し、大学で研究しています。

西崎准教授

略歴

西崎 ちひろ(にしざき ちひろ)
学術研究院 海事システム工学部門 准教授

Q 所属する学科はどんな学科ですか?

私の所属する「海事システム工学科」は、船舶の運航を支える知識や技術を学ぶことができる学科です。座学はもちろん、多くの実験演習や乗船実習を通して、船舶の構造や性能、船舶に積まれている航海計器、船舶を取り巻く環境(気象海象、規則・法律)など、船舶の運航に関わる様々なことを学ぶことができます。将来的には、船舶を動かす船長・航海士(海技士)や、工学的な視点で陸上から船舶の運航を支える技術者を目指すことができる学科です。
Q どんな授業を担当していますか?

●航海システム概論
船舶の運航に必要な専門用語や、航海の計画を立てるために必要となる「航法計算」の基礎を学ぶ授業です。1年生の前学期に開講しているため、入学して初めての専門的な科目になるかと思います。

●短艇実習
非常事態において船舶から逃げる必要がある場合に乗船することになる「救命艇(手漕ぎのボート)」を使用した実習です。救命艇の漕ぎ方はもちろんのこと、救命艇を安全に操船するために、実際に指揮を取り、チームをまとめるリーダーシップを養う実習となっています。

●レーダARPA演習
周囲の船舶の動きを知る装置として、船舶ではレーダ(レーダARPAというシステム)が使用されています。レーダ情報から周囲の船舶の動きがどのように計算されているのかを、PCシミュレーションや作図を通して学ぶことができる授業です。
Q どんな研究をしているのですか。その研究のおもしろさは、どんなところですか?

船舶の運航は航海士や機関士等の人間の関わる作業が多く、ヒューマンファクター(人的要因)により、多くの船舶の事故(海難)も起こっています。そこで、海難の分析や一般的な航海士の見張り作業及び操船を解析し、船舶の安全運航を大目標に、航海士をサポートするシステム等の研究を行っています。
自動車、航空機や鉄道等と比較し、船舶は人間の関わりが大きい乗り物であり、現状では自動化が難しい作業も多いという特徴があります。そのため、航海士(人間)に焦点を当てたアプローチが必ず発生する点が、とても面白いと感じています。
Q 何がきっかけで、その研究をしようと思ったのですか?好きになった、夢中になったエピソード、現在の研究につながるエピソード等を教えてください。

学生時代に学生寮や実習船で訓練を受け、一緒に寝起きを共にした同級生、お世話になった先輩・後輩の多くが、商船を中心に航海士・機関士として乗船しています。時折、テレビのニュースなどで「海難」というキーワードが聞こえてくると思わずドキッとしてしまうのは、大切な友達が乗っているかもしれないと思うからです。私が船舶の安全運航や航海士のサポートに関する研究を続けているのは、海難で友達が行方不明ですというニュースを聞きたくないという、とても個人的な理由からです。
Q その研究はSDGs何番の目標と関わりがありますか?その研究は、社会でどのように役立ちますか。また、どのような職業や仕事に結びつくと思いますか。

●14番
衝突や乗揚げ等の海難が発生し、荷崩れや燃料油の流出が発生すると、大きな海洋環境汚染に繋がる可能性があります。そのため、船舶の安全運航に関する研究は「海の豊かさ」を保つ一つの方法であると考えています。

●9番
船舶は一度に多くの物資や最新技術を含む大きな機器等を、様々な国へ届けることができます。つまり、船舶による輸送でインフラの整備や産業革新を促進させることができると考えられます。ただし、船舶による輸送は乗船している人間の「安全」や、荷崩れしない等の品質保証、つまり「安心」を担保されることが大前提と考えます。
Q 研究者として、今後の目標は何ですか?研究を通じて、これから世の中にどのような「夢」を与えたいですか?現実的でなくても構いません。先生の夢を教えてください。

航海士も含め、基本的にミスをしない人間は居ません。また現状は、すぐに無人運航船が運用されることはないと考えています。航海士がちょっとしたミスをしたとしても、船舶の安全運航を維持できるような仕組みを将来的に提案できればと考えています。また、航海士の仕事の負担を減らすことにも繋がるような研究を続けられればと考えています。
Q 2030年に向けて、これから入学してくる学生さんとどんな研究をしたいですか?

これから入学してくる学生さんは、幼少期よりデジタル機器を使いこなし、おそらく私たち世代にはない視点を多く持っていると思います。それらの視点を、船舶の安全運航に関わる研究に生かしてもらえることを期待しています。

【本学出身の先生への追加質問】

【本学出身の先生への追加質問】

Q 1.入学を決めた理由は何ですか。

元々、飛行機や船舶等の大きな乗り物を動かしてみたいと考えていました。そのため、航海士の免状を取得することを目的に入学をしました。
Q 2.どんな学生時代を送りましたか。思い出に残っているエピソードを教えてください。

当時は40名ほどの少人数の学科で、半数以上は学生寮に住んでいました。現在と同じで、1年生から水泳実習や1か月の乗船実習もあったため、学科メンバーとすぐに打ち解けることができ、学科全体でとても仲の良い関係だったと記憶しています。定期テストや資格試験の打ち上げ、誰かの誕生日、何かと理由をつけて学生寮で飲み会が開催され、次の日の1時間目授業が辛い…ということも多々ありました。定期テスト前が最も一致団結するタイミングでしたが、学科の有志メンバーで横浜のカッターレースに参加したり、海王祭でフォーのお店を出してみたりと、とても楽しい学生生活だった印象です。商船大学は、自身の興味のあることについて、専門的な勉強ができたことはもちろんのこと、一生の友達と呼べる多くの人に出会えた場だと思っています。その他、乗船実習科で半年間、帆船の日本丸に乗船し、貴重な経験ができたことも、とても印象に残っています。
Q 3.海洋大を受験するか迷っている高校生に伝えたいことはありますか。

実は私自身、高校までの勉強は詰め込み学習も多く、なぜその公式が必要なのか理解できないままに授業を受け、まったく楽しくないと感じていました。しかし、船舶という一つの大きなシステムを動かす視点でそれらの公式を見てみると、キラキラした公式に早変わりし、まったく違う印象に変わったことを覚えています。
海洋大での授業や実習を通し、どうして大きな機械が動くのか、私たちの生活のどこにその工学技術が使われているのか、自分自身で興味が持てるものが何かしら見つかるのではないかと思います。また海洋大は、学生同士はもちろん、教員と学生の距離も近く、とてもアットホームな大学です。

ページのトップへ