- Q 現在の研究テーマを分かりやすく教えてください。
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現在の北極海の海氷面積変動メカニズムや、海洋変動に伴う大気-海氷-海洋の相互作用の解明に取り組んでいます。北極海の海氷面積は減少を続けていると思われがちですが、夏の海氷面積は、2007年の大激減を経て減少トレンドが停止し、4年周期の変動を示すようになりました。大気や海洋も新たな変動を呈するようになり、これまでの研究で示されてきた法則やメカニズムが適用できない新しい気候レジームへ移行したといえます。
北極海の変化は一見私たちとは関係がないように思えますが、海氷が少ない年は日本の初冬が寒くなるなど、北極海の海氷変動は北半球スケールの気候変動に影響を与える要因として注目を集めています。北極海でいま何が起きているのか、海氷だけでなく大気や海洋にも注目し、地球流体力学を基礎として、観測船が観測したデータや広範囲をカバーする衛星の観測データを駆使しながら研究を進めています。
海氷減少の要因は、気温上昇により海氷が融けたということが一番イメージしやすいと思いますが、それだけでは2007年のような大激減は起きませんし、現在の4年周期変動も説明できません。もちろん気温の上昇も影響していますが、実際はもっと複雑です。海氷面積は、生成・融解量と大西洋への放出量で決まります。そしてそれらは、非常に複雑な大気-海氷-海洋のフィードバックシステムの中で決まっていることが予想されます。最終的には、現在の北極海の海氷面積変動のメカニズムを紐解きたいと思っています。
- Q 研究に取り組み始めたきっかけを教えてください。
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- もともと自然科学に興味があったのですが、研究を始めるきっかけになったのは、今の指導教員の海洋物理学の授業です。海洋を物理で説明することに興味をもったほか、実際にフィールドに出て実習することも増え、理論に基づいて海が説明できることに面白さを見出し、研究室に入りました。
- Q 研究の大変な点や面白さを教えてください。
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研究をしていてうまくいくのはほんの一部で、ほとんどうまくいきません。挫けそうになることもありますが、「分かった!」と新しいことが見つかったときは、大きなやりがいを感じます。また、複雑な自然の現象を地球流体力学の理論で説明できたときに、自然科学(物理)の面白さに驚かされます。
- Q その研究の未来を語ってください。
:短期的なもの(1~2年後程度)と長期的なもの(~10年後)
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短期的には、海氷の種類の変化に伴う大気-海氷-海洋の運動量交換のバランスの変化や、海氷減少や海氷運動の変化に対する海洋循環の応答を解明できると考えています。
長期的には、海氷面積の4年周期変動メカニズムを解明し、予測に繋げることを目指したいと考えています。
北極海の気候レジームが大きく変わったのは2007・2008年頃で、それ以前は海氷の運動も面積も、大気の振動で説明できるというのが通説でしたが、現在その法則は適用できなくなりました。現在の海氷面積の変動メカニズムは極めて複雑であり、大気・海氷・海洋の変動を包括的に理解しなければいけない点と、レジームが変わってからまだ20年も経っていないので、限られたデータの中から新しい法則を見つけなければいけないという点が課題となっています。 - Q 研究は、SDGsのどの目標に貢献できますか。
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- 「目標13:気候変動に具体的な対策を」に貢献します。最近の夏が記録的猛暑である一方で、2016年には明治8年の気象観測開始以降、11月に東京で初の積雪が記録され、2024年には大寒波が到来するなど、寒冷イベントも見られます。北極域は全球の中で最も気温上昇が著しいエリアであり、これらのどちらにも海氷減少が影響を与えている可能性があります。海氷が減少すると、海洋や大気の温度が上昇し、上空の大気のパターンが変化します。大気の変動は遠くまでシーソーのように伝播するので、日本にも影響を及ぼすことになります。この根幹である海氷面積の変動要因を解明することは、全球的な影響の評価や将来予測だけでなく、日本の気候の理解にも繋がります。
- Q 東京海洋大学に入学するにあたり、影響を受けた人や出来事はありますか。
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- 小さい頃に、海や川、田んぼや山でたくさん遊んでいたことが一番大きいと思います。大学に入る前に自分が一番心躍ることは何だろうと考えた結果、自然科学にたどり着きました。
- Q 研究を行う上で、大切にしていることやポリシーを教えてください。
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- 自然が好き、海が好きという気持ちと、まだ誰も知らないことを知りたいという好奇心を大切にしています。自然科学が相手なので、何よりも地球や自然って不思議で面白いという気持ちに突き動かされています。また地球流体力学の素養を大切にして、複雑な現象をいかに単純に説明するかということも重要視しています。
- Q 東京海洋大学を選んで良かった点を教えてください。
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- 学部時代から現場の海に出て学ぶことができる点です。データを扱うだけならフィールドに出ずともできてしまいますが、現場に出て、自分の目で本物の海を見ることの大切さを学びました。実際私も、学部三年生のときの黒潮横断観測実習で、海洋物理学の面白さに目覚めました。
- Q 大学院への進学を決めた理由を教えてください。
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まだ分かっていないこと、誰も知らないことがたくさんあるからです。学部時代の研究を発展させて、北極海の変動を解明すべく、取り組んでいきたいと思います。
大学院に進学したことで、学部時代よりも色々なことが分かるようになり、知識も増えて研究の幅が広がりました。知りたいことを知るためにはどのようにアプローチすれば良いのかということも、考えられるようになったと思います。 - Q 将来の夢や目標など、目指すキャリアを教えてください。
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- 私たちの生活や社会に影響力をもつ気候変動にアプローチできるような人材となることを目指します。現在は、アカデミアに残りたいと考えています。
- Q いま、修士博士課程に進学を検討している方へメッセージをお願いします。
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- 不安や障壁もあると思いますが、自分の好奇心や知りたい気持ちに正直に、突き進んでほしいと思います。



