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平成30年9月期東京海洋大学学位記授与式 (学部・乗船実習科・大学院) 学長式辞

御卒業・修了、おめでとうございます。今日の良き日を迎えるにあたり、陰日向になってご支援、ご指導を賜りましたご参列の皆様に、まず、心より御礼申し上げます。また本日は、ご来賓として、独立行政法人海技教育機構の野崎理事長、本学の同窓会であります海洋会の山本会長、同じく楽水会の田畑会長にご列席賜り、厚くお礼申し上げます。さらに、日本郵船株式会社人事グループグループ長代理の春名様、株式会社商船三井人事部採用チームチームリーダーの権田様ならびに川崎汽船株式会社海事人材グループ人事チーム長の徳田様にはお忙しいところご臨席賜り誠に有難うございます。
本年度の前半も多くの災害が発生しました。気候においては、全国的な夏の猛暑、台風や梅雨前線の活発化による7月の西日本や北海道の豪雨、9月の関西国際空港をはじめとする近畿圏への被害、地震では4月の島根県西部地震、6月の大阪府北部地震、そして9月の北海道胆振東部地震と立て続けに発生し、学生の皆様のご家族や ご親戚などが被害を受けられたのではないかと心配しております。災害による被害を受けられた方々に、心よりお見舞い申し上げます。一方で、これらの災害により道路や鉄道が寸断され、空路による活動がままならない中で、人及び物資の海上輸送が大きな助けになっていることは、私どもとしては思いを新たにするところがございます。
では、これから新たな一歩を踏み出す皆さんの門出に際し、大学を代表して一言お祝いを申し上げます。
学部をご卒業の皆さんは、ほかの同級生とは異なる選択をして、様々な理由で年限を上回って学んでこられ、ここに出席されているわけですが、あわてる必要はありません。これまでの時間をぜひ前向きにとらえて、今後の人生に役立てて欲しいと思います。
乗船実習科の皆さん、この6か月間学部で学んだことの集大成として参加した実習において、その成果を十分に発揮できたでしょうか? 皆さんのうち多くの方は海技教育機構の海王丸に乗船して約2か月間の遠洋航海を行いました。米国のホノルル港に寄港して、その地域の文化に接するなど、大変良い経験をされたと思います。最近、グローバル化を進めるべきであるとよく言われていますが、乗船実習科の皆さんは、これまでもそうですが、既にグローバル化の一端を担っている訳です。是非これからも世界各地の人々と、コミュニケーションを交えていただきたいと思います。また、海王丸の乗船により、「風は北から吹きたり、潮は北へ流れ去ると覚えなさい。」という航海訓練所の荒川 博 元所長の言葉を実感したことでしょう。そして、7月からは航海課程の学生が銀河丸に、機関課程の学生は青雲丸にそれぞれ乗船し、最後の実習に励みました。一方、社船実習を選択した12名の皆さんは、日本郵船、商船三井、川崎汽船の大型商船で北米・中南米、中東、豪州など多方面への航海を経験されたと伺っています。その際に、多種多様な船舶に乗船したことは、今後につながる貴重な経験になったと思います。今回、皆さんが乗船実習を通して経験し、習得したことは、これからの人生において価値ある財産、生きていく力となることを期待しています。そして、皆さんは、数少ない日本人の外航船舶職員であり、さらに海上技術者として、海運界で大いに活躍されることを楽しみにしております。
修士あるいは博士の学位を取得した皆さん、学位にふさわしい研究を成し遂げたことに対して敬意を表します。実験や研究の日々はいかがだったでしょうか?本学はグローバル化推進の一環として、授業の英語化及び海外での発表を支援しています。そこで、ここでは、英語により皆さんにスピーチします。

Some of what I will say repeats today what I wrote in the university magazine, Takumi, in 2015. However, as I believe it is something significant for those who graduate from the graduate school, I decided to include it in my message.
Have you ever questioned what is written in a textbook? I would say you should not blindly believe what is written in textbooks, especially those in specialized fields. It is not uncommon that what is once believed a universal truth can later be overturned. Questioning something believed to be a fact can sometimes lead to a discovery.
Let me tell you from my own experience. More than 20 years ago, I wrote a paper about a discovery that would have overturned something that was believed to be an established truth. I submitted the paper, but it was rejected. The reason was that it contradicted something that was believed to be true. I repeated the experiment for two more years and verified that my claims were correct using the reproduced data. Finally, the paper was accepted and printed in a journal.

What I learned from this experience was that many of the referees did not question what was written in the previous studies. As long as you are a scientist or researcher, you should be free from automatically accepting what is believed to be common sense or what is written as a conclusion in the present papers. This is the point I want to emphasize to you. If you ignore this idea, you can easily give up potentially beautiful discoveries. For studies based on experiments, the data you obtain are everything. You develop a hypothesis and design an experiment to prove the hypothesis. You do the experiment and get data. Sometimes, the hypothesis is proven wrong. Then, that would become a base for you to develop new ideas. If you blindly follow what was believed right in the past, or blindly believe that "these are the results we should get from the experiment," then you may be tempted to make up data or fabricate the data obtained. When analyzing the data, you must believe the data you obtained and be free from what are believed to be the facts.

Yoichiro Murakami, a scholar in philosophy in science, writes in his book"What is Science for Humans". He said if you simply say, "The purpose of this study is this, and we obtained the results just as expected," it is not real science. If all you need is to achieve the goal as you expected, it is a "tautology" (That is, you are saying the same thing twice using different words). If you knew the results, you didn't have to do the research. Your study becomes meaningful only when you get unpredicted, or unexpected, results. What do you think about this statement?

You are young and are able to be flexible in developing ideas. Don't blindly accept what is written in textbooks or journals. Read them with a skeptical eye and pursue your study to get novel findings and new truth.  Create innovation!

これから述べることは、2015年の学内情報誌の拓海にも一部書いた内容ですが、大学院を修了する学生にとっては大変重要なことと思い、お話しいたします。皆さんは教科書に書かれていることを疑ったことがあるでしょうか? 大学の教科書、特に専門書についてはそのまま信じてはいけません。常識といわれていることが、覆されることがよくあるからです。疑いの目で見ることで、 新たな発見につながることがあります。私の20年以上前の体験談を披露します。当時、私はそれまでの常識を覆す発見につながる論文を作成し、学術雑誌に投稿しました。しかし、残念ながら、これまでの常識ではないという理由で、リジェクトされてしまいました。そこで、その後2年間にわたり再実験を行い、やはり私たちの主張が正しいことを繰り返しのデータを基に証明し、やっと受理され、雑誌に掲載されました。

この時、教科書に載っている常識、あるいは過去の文献で言われている常識をレフリーの多くが信じているのかを知ることができました。科学者・研究者である限り、過去の常識や文献の結論にとらわれてはいけません。このことを皆さんに特に強く強調したいと思います。せっかくの新たな発見を自ら放棄しかねないからです。私たち実験系の研究は、データがすべてです。ある仮説を立てて、実験を組みデータを出していきますが、仮設通りにならないことはいくつもあります。そこから新たな発想が展開できるのです。過去の常識がこうだから、こうなるべきだと考えていると、データのねつ造や改変を行うことになりかねません。得られたデータを信じ、常識にとらわれない見方が大事です。

また、科学哲学者の村上洋一郎氏が、新潮社の「人間にとって科学は何か」の中で、次のようなことを言っています。「研究の目的はこれこれで、その通りに達成できました]というのは、本当は研究とは言えません・・・。目標を立ててそれがわかればいいと、いうのではほとんどトートロジー(同語反復)ではありませんか。結果がわかっているなら研究する必要がなかったことになりますから。予想と違ったこと、思いがけない結果が導き出された、などがあって初めて研究をやった意味があると言えるのです。」いかがでしょうか?

皆さんは学位を取られたばかりの柔軟な発想ができる年頃です。教科書や、過去の文献をうのみにせず、絶えず疑いの目で読みながら、新たな発見や真理を追究するとともに、新たなイノベーションの創出を目指してください。

論文博士を授与された方は、長年の努力が報いられたことと存じます。改めて、お祝い申し上げます。本学の博士の称号を有効にお使いいただければ幸いです。
最後になりますが、皆さんには「海洋の未来を拓くために」、その中核となって、世界中の方々とのコミュニケーションを心がけ、未来を切り開き、構築していっていただきたいと思います。そして、しっかりとした目標と方向性を定め、有意義な人生をお過ごしください。皆さんがグローバルな研究者、船舶職員あるいは高度専門技術者として世界に羽ばたくことを期待しています。

2018年9月28日
                                             東京海洋大学長 竹 内 俊 郎


                                                                                                                                                                                          
                                              

   

  
                                                  

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