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東京海洋大学についてAbout TUMSAT

平成27年度・特別鼎談

特別鼎談

竹内 本日はお集まりいただきまして、誠にありがとうございました。きょうのテーマでございますが、機能強化の取り組みに対する総括ということでお話を伺います。どうぞよろしくお願いします。

グローバル化

竹内学長竹内 本学としてはグローバル人材育成支援事業を行ってきました。特に海洋科学部では、平成26年度の入学生から、TOEICのスコアが600点に達しないと、4年生に進級できないということで、先進的な取り組みを実施し、英語のコミュニケーション能力を高める授業を、継続して行ってきています。平成25年度からは、1カ月間、学部学生を海外に派遣する、海外派遣キャリア演習というものを設置しました。これまでに50人を超える学生が、海外探検隊に行っています。香港、台湾、タイ、シンガポール、マレーシアと、五つの国、機関に、学生を1カ月派遣します。

田畑 私も学生のときに、ハワイ大学やカリフォルニア大学所属の海洋研究所等での海外体験を行いました。教育の面において、若いときに海外体験をさせることは非常によいと思います。

寺島 私も田畑委員と同じように、若いときに海外を経験することは重要だと思います。先ほど言われた、学生の海外派遣のように、若いときに海外を経験することを奨めます。中・高等学校から始まって、大学1年生から2年生ぐらいのときに行くと、それが海外に対するコンプレックスを取り除き、かつ、外に向かったグローバルな視野を養うのに非常に効果があります。それは年を取ってからよりも、若いときの、感覚がまだ新鮮なときに行うのがよいです。それともう一つ、いろいろな経験をしてくることも重要です。 それから、三つ目ですが、そのためには、いろいろな企業に行くことを奨めたいと思います。

基礎教育の充実

竹内 基礎教育の充実について、お聞かせ願います。

田畑 教養教育の充実が必要です。何か新しいことをするときに、基礎的な能力を持っているということも必要だと思います。英語は、最近の入社試験でも点数が上がってきていますが、数学は一向に上がってきません。それで教養教育と言いますか、そういうものを大学1年生の時にしっかり身につけさせることが大切ですね。

竹内 基礎教育です。

田畑 はい。私の所は数学と言っても、幾何学の試験も出しますが駄目ですね。これは海洋大学だけの話じゃないのですけれども。

竹内 理系の中での、一つの課題です。

田畑 そうですね。私の会社は、採用するのは、9割が大学院前期または後期修了の人で、1割が別の方たちです。また理系が9割ですから、大学と非常によく似ていると思っています。

竹内 確かに、英語に特化しているように見えますし、全体的な底上げも必要だということで、いわゆる教養基礎教育を充実させることが重要ですね。

田畑 今はコンピュータで、何でもやってしまいますよね。

セメスター制度

竹内 本学の1カ月程度のインターンシップ教育について、派遣の期間はいかがですか。1カ月で十分なのか、長いほうがよいのか?

田畑 3カ月か6カ月がよいのではないですか。企業がアメリカに英語研修に行くとき、一番短い研修で3カ月です。3カ月といえば、相当真剣に勉強しなければいけません。

寺島 私も、やはりセメスターを単位にして期間を決めたほうがよいように思います。今、私の孫が、東京都の高校生の留学制度で1年間アメリカへ行っていますが、それはこちらで夏休みを取って、9月からの新学期に間に合うように8月下旬に渡米し、翌年6月にセメスターを終えて帰国する予定です。これで、ちゃんと1年分学べるようになっています。

田畑 セメスター制度があれば、前期で必要とする単位を取っておけば、海外に3カ月間行ってきても、帰ってきて学部に戻れます。

竹内 そういう面では、4セメスター制度はすごくメリットがあります。1セメスターをとらなくても、単位としては十分です。留年しなくて済みます。

研究支援体制

竹内 結局、この数年で教員の基盤的研究経費が2割ぐらい減少してしまいました。本学としても一生懸命努力しています。やはり基盤的なものがなくなると、研究する環境もジワジワと悪くなります。私としては、すごく深刻に受け止めている状況です。教員は頑張ってくれてはいますが、どうしても予算不足という点があって、教育についても、そして研究にも派生しているというところが、大きな問題点になるということでございます。その辺をどうしたらよいか、なかなか難しい問題です。

寺島 国の予算だと、そういうことになってしまいます。それを補うような海洋大の仕組みを、民間からの支援も含めて考えたほうがよいです。船が油で動いている限りは、必ず起こる話です。

竹内 風力でというわけにはいかないですから。もちろんそういうものもありますが。

寺島 風もなるべく利用してということですが、風が吹かないときがあります。

社会貢献としての震災復興

竹内 本学は、東日本大震災に向けた復興ということを、ここ4年間、かなり一生懸命やってきたつもりです。毎年、福島海域での放射能測定なども、本学の練習船を利用してやってきまして、社会貢献はしているのかなということを、私どもとしては自負をしているところです。

田畑会長田畑 震災復興については、被災地域の同窓会や学生に支援を行ってきました。広く学生支援ということでは、様々の奨励制度やインターンシップ、就職相談など、同窓会を利用しようということがあります。これは非常によいと思います。教育というのは、大学に先生と生徒がいるだけではなくて、社会(同窓)がそれを支えて、初めて教育は成り立つというのが私の考え方です。

竹内 特に学生支援という点が重要だと思います。復興についてはやりたいが、なかなか難しいところもあります。それでも進めていかなくてはいけません。大学は、今後ともやっていきたいと思っています。

寺島 まだまだ続けなくてはならないという、社会の大きな流れはあると思います。その中で、海洋大がこういうことをやりたいと出していけば、それなりに理解される所もあるのではないかという期待もあります。大学の計画にも、震災対策や防災は重点事項に入っています。

竹内 今までの復興は岩手大学や、文科省の海洋地球課の支援プログラムで行った中で、本学の教員もたくさんそれに関わっています。現地の人達も本気になってくれて、「一緒にやろう」、「こういうのはどうしたらよいか」、そういうふうに聞いてくれるようになってきました。「初めて研究でやっていることと、現場での要望が結び付いてきた」というふうに、教員も言っています。

寺島 こういう機会でもないと、行ってもそうならないのが、実際にこういう機会に行って、ある程度お付き合いをしていると、本当に心が通うところが出てきます。今の話でヒントを得ましたが、東北でこういうことをしましたよということを、社会に発表していくのはいかがですか。

竹内 それは非常に重要です。大学独自の研究に対しても、毎年1回ぐらいシンポジウムを行っていますが、まだ狭いです。そういう面では広がりがありません。地元や周りの人たちだけはなく、一般の人も含めてというのが重要です。

共同研究

竹内 国立大学の改革強化推進事業という取り組みに、私どもは応募しました。国際競争力強化のための海洋産業人材育成組織の構築ということです。これとまとめて一緒に、機能強化の研究について、私どもとしては研究費の削減等が問題になっているということをお話しましたが、いくつかポイントがあると思います。外部から見て、どういう点が足りないか、必要かというところがございましたら、よろしくお願いします。

田畑 大学に何かを研究してくださいと言ってくるのを待っているのではなくて、今、社会ではこういうニーズがあるから、こういう研究を進めたいが、この研究に参加してくれる人がいますか。参加した人は知恵を持って帰ってくるわけですが、成果は各企業に還元しますという形で、フィードバックするケースが多いです。

竹内 企業とのタイアップを含め、研究も一つのセットにして、共同で行うということですか?

田畑 そうです。今、寄付講座もありますが、そういうことを研究の面でもやったほうがよいと思います。こういう研究をしますよといっても、全然手を上げてくれなかったら、そんな研究をやったって、企業にはメリットがないなというふうに思います。しかし、各社もそういう研究のシーズが欲しいということになれば、参加してくれます。それが社会評価にもなります。

寺島 研究にあたっては、誰がやるのかということとともに、何をやるのかという視点が重要です。海洋大は、研究をする立場ですが、個人の関心だけではなくて、どういう社会ニーズがあるのかということが重要です。

広報活動

taidan_03.jpg竹内 先ほどの震災復興にも関わっているのですが、最初、現場とは全然合いません。それだけ違う研究をやっています。細かいことをやることによって、サイエンスやネイチャーに出すことはあるかもしれませんが、本学はそうではなく、やはり実学が基本です。

寺島 その辺りの発信を、なるべく社会に見えるようにしていかないといけません。今までのお付き合いがある所だけではなく、海洋大はこういうことをやろうとしているという発信を、ITなんかも使って皆にも見える形にしていくと、思いがけないほうから関心が寄せられることもあると思います。

竹内 そういうところも大学は弱いです。組織体制を含めて十分ではなく、なかなか思うように打ち出せません。

寺島 今ここでいったことを一気にやるというのは難しいかもしれませんが、絶えず、そういう方向性を持ってやっていくと、だいぶ違うと思います。

竹内 発信という話が出ましたが、これから本学としては、マスコミに対して、もう少し積極的にやっていきましょうということで、マスコミ等との懇談会みたいなものを考えています。大学がどういうことをやっているか、どういうふうに持っていくかということを、報道関係者の方々とお話しをしながらやろうかなというふうに、今、提案しているところです。

寺島 記者さんも、それなりに関心を持っているのですが、簡単に情報が入りません。われわれもそう思っていますが、言葉の使い方からしてかなり専門的というふうに見られています。

田畑 全然文化が違うということもありますから。

寺島 記者さんは面白いと思えば来ますよ。私のところも定期的に一般紙や専門紙の記者さんたちに声をかけてプレス発表をしています。例えば、『海洋白書』の刊行については毎年やっています。水産や海運関係の専門紙も多いですし、一般誌の方も来ます。こちらから出かけていかなくても、やりますよと言えば、記者さんは関心があれば来ます。

竹内 できれば、そういう形でやっていこうかなと思っています。そういうものも含めて、研究に対して、より広くニーズに合わせた方向で、将来を見通せるという提案、非常にありがたく思います。

新学部について

竹内 新学部の海洋資源環境学部設置に向け、現在、準備を進めているところです。もしお二人から新学部についてご意見があれば、いただければと思います。

田畑 新学部について大変ニーズに合った学部だと思います。ただ一つだけ配慮してもらいたいことは、海の現場を知らない人ではなくて、知っている方に来てもらいたいと思います。机上で話をするだけではなくて、現場にフィットするような人材です。

寺島 まさに海洋資源をやるとなると、必ず環境が出てきます。今は持続可能な開発の時代ですから、開発をするためには、まず環境アセスメントをきちんとやらなければならないというのが、世界的な流れです。

竹内 人材育成と同時に、出口でしっかり採用していただかないと、なかなか学生も育ちません。

寺島 そうです。欲を言いますと、鉱物資源のほうがいろいろ進んでいますが、再生可能エネルギーもあります。今は原発の事故などがあって、自然エネルギーを使おうと国もかなり力を入れてやっています。

田畑 今、私どもも潮流発電や波力発電の実証実験に参加して、現地のフィールドでもやっています。これから期待される分野ですね。

竹内 新学部については、おおむね前向きのご意見をいただきました。あとは、どういう教員の人選をやっていくかというところが、今後の課題であると思いました。ありがとうございました。

田畑会長・寺島理事

ビジョン2027について

竹内 最後にビジョン2027について、今後はこれを元にやっていきたいと思っています。これが私の所信表明の一つですが、何かコメントがあれば、一言いただいてよろしいですか。

田畑 非常によくできていて、できるのかしらと、少し心配ですが、書いたからには、ぜひ実行してください。

寺島 この五つテーマは非常によくまとまっていると思います。教育・研究・国際化や社会・地域連携など、切り口も新鮮ですし、非常によいというのが第一印象です。その中で、これをどう具体化していくかというところが、今後の課題だと思います。その辺りは学長のリーダーシップが非常に大きいと思います。そちらを期待したいと思います。

竹内 ありがとうございます。これは概要です。それに基づいてアクションプランを作って、それにさらにロードマップも作って、具体化しています。この辺をしっかりと行います。田畑委員が、これだけ多いのは大変だろうとおっしゃるのは、まさにそのとおりでございますが、とにかく、まずは出さないと進みません。これが始まりだというふうに思っています。今後、経営協議会も通して、中身の具体化など、少しずつお話しをさせていただきながら、ご意見をいただければと思っています。このビジョン2027について、今後とも、どうぞよろしくお願いします。

田畑 日出男(たばた ひでお)

いであ株式会社 代表取締役会長
1968年東京水産大学(現 東京海洋大学)大学院水産学研究科修士課程修了、1999年7月京都大学博士(工学)。
1968年トウジョウ・ウェザー産業(株)(社名変更により新日本気象海洋(株)を経て、国土環境(株)になり、日本建設コンサルタント(株)を合併し、現 いであ(株))に入社。1989年6月代表取締役社長、2003年3月代表取締役会長、現在に至る。
1987年技術士(応用理学部門)、2002年土木学会フェロー特別上級技術者〔環境〕取得。
国立大学法人東京海洋大学経営協議会委員、(一社)楽水会会長の他、東京都都市計画審議会委員、(一社)海外環境協力センター理事長、(一社)日本環境アセスメント協会 名誉会長(元代表幹事)、UILI(国際民間分析試験所連合)名誉会員(元会長)などを務めている。

寺島 紘士 (てらしま ひろし)

笹川平和財団常務理事・海洋政策研究所長

1965年東京大学法学部卒業、運輸省入省。大臣官房審議官在任中、「海の日」の祝日化に取り組む。
1994年日本財団常務理事、2002年海洋政策研究財団海洋政策研究所所長、2005年海洋政策研究財団常務理事、2015年4月より現職
世界海事大学理事、日本海洋政策学会副会長、東京海洋大学経営協議会委員。
超党派の政治家、有識者等からなる海洋基本法研究会の事務局長として2007年の海洋基本法制定に尽力した。
わが国の海洋政策の提言に取り組むとともに、マラッカ海峡の安全協力体制構築、海賊対策、沿岸域管理、海洋教育の推進などの研究に取り組み、国内だけでなく世界およびアジア地域のレベルで海洋政策に関する研究・活動に積極的に参画している。
また、海洋白書を創刊し、その編集・執筆を行うとともに、著作、論文、講演など多方面にわたり活動。
著書として「新たな海洋立国を目指せ」(朝日新聞『論座』2006.11)、「海洋問題入門」(丸善 2007年)、「海洋利用のための政策と今後」(シーエムシー出版『微細藻類によるエネルギー生産と事業展望』2012.7)など、ほか多数。

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