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汐路丸(しおじまる)Ⅳ世ができるまで
安全で効率的な新しい船舶の運航形態を学習するために活躍中の汐路丸(現行)は、昭和62年に竣工されました。このたび青鷹丸の機能が統合され「汐路丸Ⅳ世」として、建造されます。本ページでは、「汐路丸Ⅳ世」が完成するまでの主な作業風景を随時ご紹介します。今後、造船の様子等を動画でお伝えする予定です。
非常用発電機
万が一、停電が起きると船内は真っ暗になるだけでなく、航海に必要な通信機器が使 えなくなり、危険です。そんな事態に陥っても、無線機器や舵取り装置等にすばやく 電力を供給してくれるのが、この非常用発電機。出番が無いの一番ですが、イザとい う時の守護神なのです。
ファンネル
ファンネルはメインエンジンや発電機エンジンから出てくる排気ガス配を寄せ集めた部分で、いわば集合煙突です。ファンネルは単に煙突としてだけでなく、船の外観に個性を与える大切な要素です。
ウィンドラスを待つ
以前紹介したウィンドラス(巨大な錨を巻き上げる力持ちな装置)がここに設置される予定です。何のヘンテツも無い台ですが、船の安全を守る大切なポジションです。
船体の一部はアルミ製!?
一般に大型船は荒波に叩かれても壊れないよう、分厚い鋼鉄の板を溶接して建造されます。新汐路丸も海水に接する部分は鋼鉄製です。一方、海面より上の構造物をアルミ製板にすることで、軽量化でき、安定性が増します。塗装前のアルミはピカピカして一見きれいですが、溶接が難しいので、慎重に作業が進められています。
軸発電機が据え付けられました
軸発電機とは、メインエンジンのパワーを電力として取り出すための特別な発電機です。出入港時に駆動するスラスター用の電力をたっぷりと供給してくれます。
減速機も搭載
メインエンジンが生み出すエネルギーが減速機を通じて高トルクに変換されます。この力で大きなプロペラを駆動し、大きな船体が推進力を得ます。
推進電動機が搭載されました
新汐路丸で推進力の一翼を担う電動機が機関室区画に据え付けられました。
見た目には小さなボディですが、海洋観測する際の推進力を生みだします。
メインエンジン搭載
ついにメインエンジンが搭載されました。意外と小ぶりなボディですが、パワーは十分。信頼性も実績もある機種で、新汐路丸の安定的な推進力を生み出します。
ブロック搭載
これまで少しずつ作られた船体のブロックが船台に搭載され、船の形が出来始めています!
何10トンもある鉄のカタマリが、巨大なクレーンで吊り上げられ、数mm以下の精度でくみ上げ、つなぎ合わされていきます。造船所のエンジニアの皆さんの丁寧な仕事と細心の注意により、鉄板に息吹が吹き込まれています。
主発電機立会試験
ヤンマーパワーテクノロジー株式会社の尼崎工場にて,主発電機の立会試験を行いました。主発電機は船内のあらゆる電気機器の動力源であり,ライフラインとしても重要な役割を担っています。どのような負荷状況であっても一定電圧,一定周波数を出力してくれる律儀な機器です。主発電機はディーゼルエンジンとオルタネーターから構成されおり,機械工学と電気工学を両輪として駆動されます。排気などで周囲も温めますが,エンジニアの気持ちも熱くしてくれる機器です。
ディーゼルエンジン側
オルタネーター側
保護装置試験
開放検査
メインエンジン
ついに汐路丸IV世のメインエンジンが仕上がり、群馬県のIHI原動機さんの工場にて性能確認の試験を行いました。パワーのわりに、思ったより小ぶりなボディに少し驚きました。磨き、鍛えられた鋼鉄のボディのメカメカしさに惚れ込んでしまいます。これまで見てきたどの機械よりも「生命」を感じるのは、燃料の爆発燃焼がもたらすエンジンの鼓動ゆえでしょうか。この重低音が汐路丸の息吹となる日が次第に近づいています。。
ハンドルノッチ
ターニングギヤ
クランクケース
シリンダヘッド
地殻変動観測装置の立会試験
ご存知の通り、日本周辺は太平洋プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレート、北米プレートがぶつかりあうホットスポット。目には見えなくても、プレートの移動により日本列島は少しずつ動いています。このプレートの移動速度を観測する計測器が「地殻変動観測装置」です。汐路丸IV世は地球のメカニズムを解明する最先端の研究にも貢献します。写真は、地殻変動観測装置の一部である音響送受波器と呼ばれる部分です。その他にDA/ADを司る部分と、コントロール・記録する部分などは観測室に設定されています。
音響送受波器
船底タンク
大型エンジンや、発電機、電動機、熱交換器、空気圧縮機... そういった大型機材が所狭しと並ぶ機関室。その下に燃料油や潤滑油を貯めておくタンクがあります。船体の強度を保つため、狭い空間にいくつもの壁があります。いつかは機械音や波の音が響き渡るタンク。今は暗く静かな空間が出航の時を待っています。
船底タンク
Aフレームの立会試験
Aフレームは船尾に設置される大型クレーンの一種で、調査船等によく見られます。海中の生物資源や、海底資源調査に使う大型の機材を曳航したり、水中探査ロボット降下/揚収する時に用います。永らく「航海実習」、「新技術の研究開発」に携わってきた汐路丸Ⅰ~III世。その歴史を引き継ぐ汐路丸IV世に「海洋調査」というミッションが加わったことを印象付ける設備、それがAフレームです。
Aフレーム
CTDウィンチの立会試験
CTDとは海水の電気伝導度、温度、水深を計測するための海洋観測には欠かせない装置。これを所定の水深まで下ろしたり、引き上げたりする装置がCTDウィンチです。海洋を理解するための研究はこうした一見地味な装置が正常に動作してこそ、なのです。
CTDウィンチ
機関室の主機周り工事
機関室最下段の主機周りで機器を支える金具の取付けが進んでいます。写真中央の台形をした架台は電動推進機を載せる台です。その上の作業員が立っているところが、主機を載せる台、その左の赤い工具箱の下が、発電機原動機の台になります。
機関室最下段
減速機の立会試験
日立ニコトランスミッション様の大宮事業所にて、減速機の立会試験を行いました。汐路丸Ⅳ世は主機関(推進用エンジン)と電動機(推進用モータ)を併用してプロペラ動力を得るため、それぞれの回転数に合わせた歯車が減速機に内蔵されています。主機関と電動機からのアツいパワーを受け止め、必死に歯を噛みしめながらプロペラを回してくれる重要な構成機器です。
減速機の外観
内部の歯車
ウィンドラスの立会試験
船は海を力強く走るだけではありません。時には錨(いかり。アンカーとも言います)を海底に下ろして海上で休みます。錨とその鎖はとても重いので簡単に引き上げることは出来ません。そこでウィンドラスの登場。海底に突き刺さった錨を軽々と引き上げます。
ウィンドラス
機関制御盤の立会試験
大型エンジンを含む大規模システムを制御し、その運転状態を常時細かく監視するのが機関制御盤。この世に完璧なモノは無いし、故障しない機械も無い。だから世界は愛おしい。そんなエンジニア魂こそが "エンジンや周辺機器のわずかな異変" も見逃さないのです。
機関制御盤
ラインホーラーの立会試験
海洋観測機器等を丈夫なワイヤーで吊り下げ、水深800~1000mまで下ろして利用することがあります。観測機器が捉えた未知の世界のカケラを引き上げる装置、それがラインホーラーです。
ラインホーラー
油圧システムのチェック
主配電盤の立会試験
発電機から船内で各種電気機器に電力を安全に分配する設備を配電盤と言います。一見地味ですが、とても大切な設備です。その性能試験を山口県のJRCSさんの工場で実施しました。
主配電盤
測定・調整の立合い 主機関
新汐路丸の主機関(メインエンジン:推進用のエンジン)の組立が完了し、運転に関わる調整が進んでいます。この後、さらに調整が続けられ、12月に陸上公試(機関メーカーの出荷前検査)が行われる予定です。陸上公試が完了すると、機関の塗装等が行われ、いよいよ造船所への出荷準備が始まります。
ソナードームと気密試験
新汐路丸には各種海洋環境を計測するたくさんの観測機器が搭載されます。 それらのセンサーは船底から突き出したソナードームに配置されます。
ソナードームと圧力ゲージ
写真右下に圧力ゲージが取り付けられていますが、ソナードーム内の 気密が保たれているか、中に空気を充満させて圧力低下がないか確認します。
また溶接箇所から空気の漏れは石けん水をかけて確認します。
石鹸水による確認
立会試験(インバータ)
搭載予定のインバータセットが完成し、その性能確認のため、岐阜県の大洋電機さんを訪問しました。パネルの中にはインバータモジュールを始め、遮断器やコンタクタ、各種制御装置がギッシリです。一見地味ですが、マニアにはたまらない装置です。
動作確認
内部目視確認
推進電動機
プロペラを駆動する電動機の性能試験を行いました。通常運転ではあり得ないほどのスピードや力を加えてもなお、異常なく運転できることや、高電圧を加えても壊れないことを実験的に確かめます。
過負荷試験
接続端子
メインプロペラ
新汐路丸のメインプロペラがついに登場。4翼の可変ピッチプロペラです。4枚の翼の角度を変えることで(詳しく知りたい方はスターンスラスタのページをご覧ください)、プロペラの回転方向を反転させなくても前進・後進がスムースに切り替えられる便利なプロペラです。
立会試験の様子-1
立会試験の様子-2
バルバスバウのブロック建造
バルバスバウ(船の一番先端の部分)のブロックが建造が着々と進んでいます。分厚い鉄板が美しい局面に加工され、つなぎ合わされていきます。船が進む時に一番大きな圧力が加わる大切なブロックです。
スターンスラスタの検査
スターンスラスタは船体を横方向に移動させるための特殊なプロペラです。岡山にあるプロペラメーカー(ナカシマプロペラ)でその動作試験が行われました。
スターンスラスタ-1
スターンスラスタ-2
ブロック検査
新汐路丸の船首に近い2つの二重底ブロックの検査を行いました。鉄板で覆われた迷路のような空間を四つん這いになって進み、溶接個所を丁寧にチェックします。
バウスラスタ
ブロック検査-1
ブロック検査-2
ブロック検査-3
監督室での打ち合わせ
造船所内の監督室で打ち合わせ。船主(東京海洋大学)側である建造委員の教員と、造船所エンジニアとの細やかなコミュニケーションの積み重ねが良い船を建造する最大の鍵なのです。
今後もこちらのページで汐路丸Ⅳ世の建造の様子をお知らせします(不定期)。
起工式
練習船汐路丸(しおじまる)Ⅳ世の起工式について
https://www.kaiyodai.ac.jp/topics/news/202009300950.html
【YouTube動画】