(計画・方法)テーマb.多種の同時推定種分布モデルによるチュウゴクモクズガニ国内定着のリスク評価(横田賢史)テーマc.時空間分布モデリングを用いた局所的なスケールの資源評価・管理への応用(岩田繁英)チュウゴクモクズガニが外来ザリガニのような国内の侵略的外来生物として警戒されている。餌となる生物群集に着目して、本種の国内定着リスクを評価することを目的とする。世界各地の生物分布データベースによる多種の同時推定種分布モデル(jointSpeciesDistributionModel:jSDM)を適用して生態系システムの視点からより多角的に国内定着のリスク評価に取り組む。(計画・方法)種分布モデル(SpeciesDistributionModel:SDM)は、生息環境と原産域、侵入・定着域、未侵入域の関係性を統計学的に解明する方法である。これまで、本種でもSDMを適用し、環境条件から国内の定着リスクを評価した。しかし、SDMは1種でのモデル構築のため、生物分布を規定する種間相互作用を組み込むことができなかった。多種の分布が同時推定できるjSDMは当初から計算負荷が大きな課題であった。しかし、近年の手法開発、パッケージ提供により、この課題が軽減されつつあり、PCで実行可能となった。そこで、俯瞰的なマクロの視点から、外来生物の分布拡大を環境と生物群集との相互作用により予測するためのツールとしてjSDMを用いて、チュウゴクモクズガニの定着リスク推定を試みる。(結果と今後の展望)SDMによりチュウゴクモクズガニの原産域の環境と侵入・定着域の環境に差異が明らかになり、侵入に伴う本種のニッチシフトによる日本国内への侵入が懸念される。一方、日本在来の近縁種のモクズガニについても遺伝分析の結果から海外に移入していることが報告され、両種の競合に加えて新たな侵入域での環境の変化に伴う交雑や適応進化による影響も重要な課題となってきた.両種が共存するエリアは今のところ日本を含めて報告はないため、jSDMによる解析に適切な評価はできない.しかし、今後の定着状況に関する随時、情報を収集し解析を進めていく必要がある.チュウゴクモクズガニと餌生物あるいは捕食生物を含めた同時推定については、分布域が広く原産域と侵入域での種組成にも差異が大きいことから、更に関係のある環境データの選定を検討している.種の選定と環境情報を整理し、jSDMによる同時推定を行い、生態群集としての環境条件ならびに侵入域での生物群集構成の将来的な変化について推定する.さらに発展的な取り組みとして今後は種の分布情報のみでなく、移動・拡散に伴う種内での遺伝的な変化の特徴を捉えて精度の高い予測を行う.時空間分布モデリングによる漁場における水産資源の密度の推定および持続的な漁業を達成する漁獲可能量を提示する手法の開発とその結果を小規模な漁業者向けに提供できるプラットフォームの基盤構築を目的とする。今年度はオープンソースの漁獲努力量、漁獲量の利用方法の効率的な収集方法に関する情報収集をするとともに収集システムの構築を検討する。資源評価部分に関しては課題担当者の共同研究機関から借用している漁業情報を基に局所的な資源評価・管理に資する結果をどのように提示すればよいか、どのような結果を提示すればよいか手法の検討を実施する。(結果と今後の展望)オープンソースのデータに関して、スクレイピング技術を使った収集方法を検討した。しかし、情報提供先への負荷がかかることや本研究における対象は限られていることからシステムを構築するよりも取得したドキュメントから効率的にデータ収集する方が効率が良いと結論づけた。また、共同研究機関から借用している漁業情報から空間ごとの漁獲量の推定を実施した。ただし、その結果からまだ十分な精度は得られていないと判断した。今後の課題として、前者に関しては既存のソフトウェアも活用することで効率的な情報収集・整理技術の検討をする必要がある。後者に関してはより精度を上げるための手法の開発・検討が必要である。4.海洋ビッグデータの取得、AI分析研究の推進(1)海洋生物ビッグデータを活用したレジリエントかつ持続可能な漁業を実現する漁業統合支援システムの開発と海洋AI人材の育成
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