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テーマf.AI学習で得た時空間発展モデルの再現性の検討(田原淳一郎、中井拳吾)実際の大気海洋などの現象の時系列データを学習し、未来予測に役立てようとする研究が出てきている。しかし、単に時系列を予測できるだけでは現象のモデルを構成したというには不十分である。そこで学習により得た時間発展モデルが数理的な観点からどの程度再現するか明らかにする。特に、双曲性が崩れた力学系構造の再現性に注目する。(計画・方法)見たい力学系構造を持ったものの一つとして高次元のローレンツモデルがある。また、決定論的ダイナミクスの時系列予測をするうえでリザーバーコンピューティングと呼ばれる機械学習が有効であることがわかってきている。そこでまずはこの学習手法を用いることで高次元ローレンツモデルの時系列データから高精度な時系列データ予測が可能な機械学習モデルを得る。(結果と今後の展望)高次元ローレンツ系ではパラメータによって力学系構造が大きく変化し、局所的な不安定次元が1次元である場所と2次元ある場所とが混在するパラメータがあることが知られている。このパラメータでの高次元ローレンツ系の時系列を学習し、その時間発展を予測する機械学習モデルの構成に成功した。下の図2に構成した機械学習モデルによる予測結果を記す。横軸が時間で時刻0から予測を開始し、予測した高次元ローレンツのある変数の動きを赤色の実線で書き出した。また、比較のため高次元ローレンツ方程式を直接計算することで得た正解の時系列データを青色の点線で書き出した。カオス性から予測誤差は広がっていくが時刻6程度までは非常によく予測が当たっていることが見て取れる。長時間計算の結果を下の図3に書き記した。ある程度の時間まではモデルが破綻せずに計算できることが見て取れる。本研究で構成したモデルについて、次元のスイッチなどの力学系構造に注目しその再現性を解明することが今後の課題である。この再現性が明らかになれば、実データに対する機械学習モデリングの有効性がより鮮明になることが期待される。図2構成した機械学習モデルによる予測結果図3長時間計算の結果4.海洋ビッグデータの取得、AI分析研究の推進(1)海洋生物ビッグデータを活用したレジリエントかつ持続可能な漁業を実現する漁業統合支援システムの開発と海洋AI人材の育成

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