本実習は、1年次後期開講の「水圏環境リテラシー学」の理論に基づき、海辺フィールドにおける体験型プログラムを通して、沿岸域の水圏環境の理解と関心を深めながら、水圏環境教育推進リーダーとして備えるべき実践的資質・能力(教育技能、コミュニケーション技能)の基礎を習得することを目的とする。
本実習は、2年次夏季休業中に集中授業(4泊5日)で、本学館山ステーションおよび富浦ステーションを共用して実施した。 実習定員は40名で、1実習20名定員で2回実施した。指導は、本学教員3名、外部講師4名およびTA5名で実施した。実習プログラムは、水圏環境観察のツールとして、シーカヤック、磯観察、スノーケリングを取り上げた。シーカヤックは富浦ステーション、磯観察とスノーケリングは館山ステーションにて実施した。下記に実習内容を示す。
・1日目(富浦) シーカヤック基礎練習1
・2日目(富浦) シーカヤック基礎練習2、ミニツーリング(漂着ゴミ調査を含む)
・3日目(富浦) シーカヤックツーリング(パックテストによる水質測定を含む)
・4日目(館山) 磯観察、スノーケリングによる水生生物調査1
・5日目(館山) スノーケリングによる水生生物調査2
シーカヤックプログラムでは、受講生はシーカヤックを初めて漕ぐ学生がほとんどであるため、まずシーカヤックの技能習得トレーニングから始めた。沿岸ツーリングプログラムでは、岬周辺の潮流や防波堤周辺の波の変化について体感しながら、沿岸に生息する水生生物(海藻や魚類等)や岸壁に営巣するハヤブサ等の海鳥の生態や海岸地形を観察した。
また、ツーリング時に、海岸漂着ゴミ調査と水質調査の2つの水圏環境モニタリング調査を実施した。海岸漂着ゴミ調査は、シーカヤックにより岬周辺の海岸に着岸し、JEAN(クリーンアップ全国事務局)作成「世界ゴミ調査キャンペーンデータカード」を利用し、そのマニュアルに基づき実施した。水質調査は、ツーリングコースの5箇所の海水を小型容器にサンプリングし、宿舎に戻ってからパックテストによるCOD測定を実施した。
磯観察は、干潮時に実施した。磯観察とスノーケリングプログラムは、4班に分けたグループごとにテーマを決めて水生生物観察を行なった。
なお、毎晩宿舎において講義を実施した。講義内容は、(1)シーカヤックを用いた海辺の環境教育および海洋教育、(2)シーカヤックの歴史・文化、(3)シーカヤックツーリングでの水圏環境調査の留意点、(4)シーカヤックガイドによるウミガメ・イルカの生態調査報告、(5)磯観察とスノーケリングでの水生生物観察時の留意点、(6)水圏環境指導者としての伝達方法等であった。また、シーカヤックツーリング、磯観察、スノーケリングで観察した様々な水生生物について、夜の講義時に図鑑を参照しながら振り返った。
さらに、実習前の事前学習として、学内プールおよび体育館にて、水圏フィールドでの実習実施時の安全管理プログラムとして、着衣泳による背浮き実習、AEDを使用した心肺蘇生法実習も実施した。
(担当:海洋政策文化学科 田村祐司)
水圏環境リテラシー学実習