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橋濱史典助教が2013年度日本海洋学会岡田賞を受賞

Last Update : 2013-04-01 09:07

受賞概要

日本海洋学会岡田賞は年度の初めに(4月1日現在)36歳未満の日本海洋学会員で、海洋学において顕著な学術業績を挙げた者の中から、選考を経て選ばれます。この度、本学の橋濱史典助教が受賞することとなりました。

受賞対象課題

高感度栄養塩類分析法を用いた亜熱帯海域表層の生物地球化学的研究

日本海洋学会長による推薦理由(受賞対象となった活動の内容)

栄養塩は、植物プランクトン増殖を律速する物質として、今日ではルーティンに測定される海洋観測項目の一つとなっている。また、全球物質循環における栄養塩の役割に焦点があてられるようになり、海洋循環や海洋物質循環の中で栄養塩比を包括的に扱ったRedfield比や、そのアノマリーとしてのN*が提唱されるとともに、脱窒、窒素固定といった窒素循環の研究が大きな進歩を遂げた。その後、1990年代になると第4の栄養塩として鉄が注目されるようになり、海洋には鉄律速海域が広範囲に存在することが明らかになった。

橋濱史典会員が行った栄養塩の高感度分析は、このような研究の流れに引き続く革新的な研究展開をもたらしたものと位置付けられる。具体的には、長光路キャピラリーフローセルを用いた栄養塩類のナノモルレベルでの高感度分析手法の導入に取り組み、観測船を航走させながらの表層海水中のリン酸塩、硝酸塩の同時連続計測に成功した。栄養塩の高感度測定法はいくつか提案されているが、橋濱会員の導入した方法は、表層海水中における栄養塩の詳細な空間分布の連続測定を可能とした点で特筆すべきものである。この手法は、ケイ酸やアンモニウム塩など他の栄養塩類にも適用可能であり、物理・生物パラメーターの連続計測と併用することで、栄養塩の空間分布を決定するプロセスに関する解析を可能とする。

橋濱会員はこれらの観測から、硝酸塩とリン酸塩が同時に枯渇状態にある特異な海域が西部北太平洋亜熱帯域の2000 km四方以上にわたって存在していることを明瞭に示すとともに、このような系の成立には窒素固定が重要な役割を担っていることを指摘した。さらに、南太平洋においては、窒素固定によるメソスケールでのリン酸塩枯渇パッチが存在するという重要な発見もした。高感度測定による栄養塩の分析は、サルガッソー海およびハワイ沖定点で米国グループにより実施され、変化の少ない均一な亜熱帯域の水塊という従来の概念を大きく変えつつあるが、橋濱会員らの発見した北太平洋西部のリン、窒素の枯渇域は世界最大規模に達するものであり、それが海洋循環ではなく大気経由のダスト(鉄を含む)の降下によってもたらされていることを示すことで、亜熱帯海域表層の生物地球化学的研究に極めて重要なブレークスルーをもたらしつつある。

以上の研究成果は、実験室レベルでの検討から洋上観測の実施に至るまで、真摯な姿勢で積み重ねてきた橋濱会員の地道な努力の賜であり、海洋化学の分野における今後のさらなる活躍を期待させるに十分なものといえる。この研究業績は日本海洋学会岡田賞の受賞対象にふさわしく、よって橋濱史典会員を受賞候補者として推薦する。

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