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東京湾は大気から大量の二酸化炭素を吸収 練習船『青鷹丸』、実習艇『ひよどり』を用いた定期航海による成果(東京海洋大学プレスリリース)

Last Update : 2017-03-14 09:00

ポイント
  • 沿岸域の二酸化炭素収支についての従来の知見に反し、東京湾の海水は大気から大量の二酸化炭素を吸収
  • この吸収は、生物活動による二酸化炭素固定(光合成)が陸域から供給される有機物の分解を上回ることが原因
  • 下水道が整備された都市沿岸海域では、下水処理による有機物除去により、二酸化炭素の正味の吸収が促進された可能性
  • 沿岸海域の二酸化炭素収支を一般化する概念図を提唱
  • 大学練習船による定期観測で得られた国際的に注目される研究成果

東京海洋大学の久保篤史博士研究員(海洋システム観測研究センター)、前田洋作氏(大学院海洋科学技術研究科海洋環境保全学専攻修了、現所属:海洋研究開発機構)、神田穣太教授(学術研究院海洋環境学部門)は、東京海洋大学練習船「青鷹丸」等で4年間にわたりほぼ毎月の調査を行い、東京湾表層水は大気中の二酸化炭素を大量に吸収していることを報告しました。また、以上の結果を基に世界の沿岸海域における二酸化炭素収支が決まる仕組みを一般化した概念図を提唱しました。
 本研究は、JSPS科研費 JP20510005「基盤研究(C)」、JP24510009「基盤研究(C)」、およびキヤノン財団「理想の追求」の助成を受けたものです。
本研究成果は、英国Nature Publishing Groupの科学誌「Scientific Reports」に2017年3月13日19時(日本時間)にオンライン公開されます。

【研究の背景】

 沿岸海域は海洋全体に占める面積は小さいものの、陸域からの有機物負荷や活発な生物活動により全球規模での二酸化炭素収支に大きく寄与することが知られています。これまでの研究から、沿岸海域は大量の二酸化炭素が大気へ放出する場であると考えられてきました。これは、沿岸海域における陸域起源有機物の分解による二酸化炭素生成のためだと考えられています。しかし、現在の沿岸海域における二酸化炭素収支の見積もりは非常に限られた観測海域の結果を基に行われています。さらに、時空間的に密な観測はほとんど行われていないため、現在の見積もりには大きな不確かさがあります。
本研究グループは、2007年3月から2010年12月まで毎月一回、東京海洋大学練習船「青鷹丸」を用いて東京湾北西部から湾口部までの観測、さらに2009年5月から2010年10月まで9回、実習艇「ひよどり」を用いて東京湾流域河川河口域や京浜運河などの陸域付近の観測を行いました。そして、これらの観測より、東京湾全域における二酸化炭素収支を推定しました。

【研究成果の概要】

 東京湾の大部分では活発な生物活動による二酸化炭素消費が有機物分解による二酸化炭素生成の効果を上回り、二酸化炭素の吸収域となっていました(図-1)。これは従来の沿岸海域の二酸化炭素収支の知見とは全く相反するものです。河川水の影響を強く受けている東京湾北西部の極めて限られた領域のみ、他の沿岸海域の観測結果同様、二酸化炭素の放出域となっていました(図-1)。一方、沿岸域よりさらに沖合の陸棚域では、一般に有機物分解の効果を上回る光合成により、二酸化炭素の吸収域となることが報告されていました。東京湾において見いだされた二酸化炭素吸収は、これまで知られていた陸棚域における二酸化炭素吸収とよく似たメカニズムであることが分かりました。
東京湾は世界の沿岸海域と陸棚域における二酸化炭素収支の特徴の両面を持ち合わせていることが明らかとなりました。以上の結果を基に沿岸海域における二酸化炭素収支を一般化する概念図を提唱しました(図-2)。この概念図では大気―海洋間の二酸化炭素交換量がゼロとなる境界線が、二酸化炭素放出域である沿岸海域と二酸化炭素吸収域である陸棚域の間にあります。そして、東京湾ではこの境界線が極端に陸側にあるため、湾全体では二酸化炭素の吸収域となっていました。これは、東京湾流域の下水処理場で大量の陸域起源有機物が除去された結果だと考えられます。
現在、沿岸域の都市化は進んでおり、都市沿岸域の数は2050年までに現在の4倍になるといわれています。そのため、世界的に見ると東京湾のような沿岸海域は今後増えてくると考えられます。本研究結果を現在の都市沿岸海域、将来の都市沿岸海域の面積を仮定して計算すると全球での二酸化炭素収支は0.074、0.014 PgC year-1となり、現在見積もられている沿岸海域における二酸化炭素放出量の79%、15%となると考えられます。

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図-1全ての観測データを500m×500mのグリッド平均にした(a)東京湾における二酸化炭素交換量(赤が大気への二酸化炭素放出、青が二酸化炭素吸収)と(b)塩分。

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-2 沿岸海域と外洋域における正味の二酸化炭素交換量を示す概念図。

(上)正味の二酸化炭素交換量(赤色実線)、これは陸域起源二酸化炭素供給(緑色点線)と光合成による二酸化炭素消費(黄緑色点線)の和によって求められる。灰色点線は大気と海洋の二酸化炭素交換量がゼロを示している。

(下)正味の二酸化炭素交換量(赤色実線)と東京湾の二酸化炭素交換量(赤色点線)。二酸化炭素交換量がゼロとなる境界線が沿岸海域(二酸化炭素放出)と陸棚域(二酸化炭素吸収)の間を移動する(橙矢印)。東京湾の場合、流域の下水処理によって陸域起源有機物が除去されることにより、この境界線が極端に陸側に移動している。

【研究成果の意義】

 本研究は、流域において下水道が整備された先進的な都市域の沿岸における二酸化炭素吸収を明らかにしました。今後世界中で進行していく沿岸の都市化と流域の下水道整備に伴い、世界の海洋における二酸化炭素収支の将来予測についての指針となることが期待されます。

【発表論文】
・タイトル

A significant net sink for CO2 in Tokyo Bay(東京湾における大量の二酸化炭素吸収)

・著者

Atsushi Kubo(久保篤史、東京海洋大学), Yosaku Maeda(前田洋作、東京海洋大学、現所属:海洋研究開発機構), and Jota Kanda(神田穣太、東京海洋大学)

・掲載雑誌

Scientific Reports, 2017, 7, 44355, doi:10.1038/srep44355

【本件についての問い合わせ先】

神田穣太(カンダ ジョウタ)
国立大学法人東京海洋大学学術研究院海洋環境学部門 教授
TEL:03-5463-0452
Email:jkanda@kaiyodai.ac.jp

【発信元】

国立大学法人東京海洋大学総務部総務課広報室
TEL:03-5463-0355
E-mail:so-koho@o.kaiyodai.ac.jp
https://www.kaiyodai.ac.jp/

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