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超深海への挑戦~「FISH2017」航海報告

Last Update : 2017-09-14 09:18

 

FISH2017.jpg 6,000m以深、10,920mの最深部までにひろがる超深海は、高水圧、低温、暗黒、貧栄養の極限環境です。
 深海からは、ウミユリ、原始貝類であるモノプラコポーラなどの古代型生物が報告されていますが、6,000mを越える深度になると調査できる観測機器が限られているため、超深海の環境と生物の実態は未だに明らかにはなっていません。超深海では、ランダーシステム(投げ込み式自立型ロボット)による調査が有効です。
 本学は、ハワイ大学(米国)、ニューカッスル大学(英国)、南デンマーク大学(デンマーク)、東京下町の中小企業等が集結した江戸っ子プロジェクト(日本)に声をかけて、様々なランダーを持ち寄り、超深海にあるという、魚を代表とする深海生物の生息深度の限界を明らかにすることを目指した、国際共同観測を実施しました。
 航海名「FISH2017」(Frontier Instrumentation of Scientific Hadal cruise in 2017の略)は最深部の魚の系統と生態に迫ろうという意味を込めて名付けました。調査航海には世界5カ国(米、英、独、デンマーク、日本)から17名が参加しました。ランダーチームのほかにNHK の取材班が同乗して調査の様子を撮影しました。
 

 

 

 調査は、本学の練習船「神鷹丸」による2016年度長期遠洋航海の前半(東京〜パラオ)の2017年1月26〜30日の間、ミクロネシア連邦排他的経済水域にあるマリアナ海溝チャレンジャー海淵において実施しました。水深7,000m以上最深部までの超深海にさまざまなランダーを投入しました。カメラランダー(図1)とフィッシュランダー(図2)は、主に、8,000〜8,500mの水深にあるという魚類の生息限界に挑みました。江戸っ子ランダー(図3)は、特に7,000m付近に生息する超巨大ソコエビの分布と生態を明らかにすることを目指してもらいました。
 これらのランダーでは、深海生物の写真およびビデオを撮影するとともに、餌をつけた罠を仕掛けて、様々な生物を採集しました。
 海溝域の物質循環は、異なった深さから採水ができるプロファイリングランダー(図4)と神鷹丸に備えられているCTD-Rosette サンプラーを併用しました。採集した海水は濾過をして水中の浮遊物質を回収し、放射性同位体炭素14による年代測定を行って懸濁物質の水中の滞留時間を推定することを目指しました。調査は5日間でしたが、奇跡的に天候に恵まれ、貴重な超深海の生物の映像と生物・環境試料を採取することに成功しました。

FISH2017_1.jpg
図1 カメラランダー(Alan Jamieson提供)

FISH2017_2.jpg
図2 フィッシュランダー(Jeff Drazen提供)

図3 江戸っ子ランダー(江戸っ子1号プロジェクト提供)
図3 江戸っ子ランダー(江戸っ子1号プロジェクト提供)

図4 プロファイリングランダー(Ronnie Glud提供)
図4 プロファイリングランダー(Ronnie Glud提供)

 生物標本は、ミクロネシア連邦政府の許可のもと、東京海洋大学マリンサイエンスミュージアムで登録管理しています。共同研究調査に参加した世界の研究者たちは、本学とミクロネシア政府の了解のもとでデータとサンプルの分析を行っておりますが、いくつもの科学的な知見が得られることと期待されています。なお、採取標本のうち、マリアナ・スネイルフィッシュとダイダラボッチ(図5)は、10月1日まで国立科学博物館で開催されている「深海2017」において展示されています。

図5 採取されたマリアナ・スネイルフィッシュとダイダラボッチ(北里 洋 提供)
図5 採取されたマリアナ・スネイルフィッシュとダイダラボッチ(北里 洋 提供)

 また、2017年8月27日に放映されたNHK スペシャルDeep Ocean 第3集「超深海 地球最深(フルデプス)への挑戦」では、神鷹丸航海FISH2017 の調査の様子が流され、採集したマリアナ・スネイルフィッシュや超巨大ヨコエビが紹介されました。


(東京海洋大学特任教授、北里 洋)

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