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混合ホットスポット:黒潮上流トカラ海峡において帯状の長周期内部波に伴う帯状強乱流層構造を捉えることに初めて成功(2017.11.28)【11月7日付のプレスリリースを訂正しました】

Last Update : 2017-11-07 11:27

(訂正の経緯の説明)

11月6日(月)19時解禁で本学から下記の表題でプレスリリースさせていただきましたが、11月17日(金)に外部資金に関する事項について確認がとれていないことが判明したことから、当該部分を削除した版をプレスリリースさせていただきました。
本日、当該部分について確認がとれましたので、改めて修正版をプレスリリースするものです。

なお、論文の外部資金に関する記載については、修正について論文の発行元と協議中です。また、研究の科学的な内容についての記載は最初(11月6日)のプレスリリースと変更ありません。

ポイント

・従来の知見に反し、広範囲にわたる帯状の強い乱流層が形成されることを観測で明らかにした。
・準自由落下曳航式に乱流を観測する手法を世界に先駆けて確立し、乱流の空間分布の高解像度観測を可能とした。
・黒潮上流で発生する強い乱流は、海域亜表層の水塊変質、栄養塩供給に極めて重要である。

東京海洋大学の長井健容(助教)は、2016年11月12-20日に実施された鹿児島大学かごしま丸を用いた、トカラ海峡海域における乱流微細構造の断面観測を行い、本海域で、近慣性内部波と呼ばれる長周期の内部波が、薄いパンケーキの様な帯状の流速勾配を100m程度の鉛直スケールで形成し、これが同じく帯状の著しい強乱流層を100m程度の鉛直スケールで数10kmの広範囲にわたって形成していることを初めて捉えました。

本研究は、東京海洋大学が、鹿児島大学、水産研究・教育機構東北区水産研究所、九州大学応用力学研究所、海洋研究開発機構の協力を得て実施され、日本学術振興会(JSPS)科学研究費(新学術領域「海洋混合学の創設」公募研究JP16H01590, JP15H05818, JP15H05821)の助成を受けました。

 本研究成果は、英国Nature Publishing Groupの科学誌「Scientific Reports」に2017年11月6日19時(日本時間)にオンライン公開されます。

【研究の背景】
 
黒潮は、フィリピン沖から始まりルソン海峡、台湾東方沖、沖縄トラフ、トカラ海峡、土佐湾沖を経て本州南岸を流れる西岸境界流です。また、近年の研究によって、表層を貧栄養で知られる黒潮は、光の届かない亜表層では、周辺の同じ重さの海水よりも栄養塩を比較的多く含み、栄養塩を南方から亜寒帯へ輸送する栄養塩ストリームであることが報告されています。このため、黒潮が流れる海域での混合現象は、海域の水塊を変質するだけでなく、亜表層を流れる栄養塩ストリームの栄養塩を表層へ供給する重要なプロセスであると言えます。この黒潮栄養塩ストリームは、上流域である、沖縄トラフ・トカラ海峡において、浅瀬や多数の島を流れなければならないため、沖縄トラフやトカラ海峡は、"混合のホットスポット"として近年注目を集める海域となりました。
 本海域における近年の流れの観測結果は、著しく振幅の大きな長周期内部波である近慣性内部波が卓越して伝播し、この様な近慣性内部波がこの海域の混合に寄与する可能性を指摘しています(図1)。しかしながら、これまで乱流を直接当海域で測定した例は殆どありませんでした。そこで、本研究では、2016年11月12-20日に鹿児島大学かごしま丸を用いて、トカラ海峡における自由落下曳航式乱流微細構造の鉛直断面観測を実施しました。

【研究成果の概要】
 
観測の結果、先行研究と同様な振幅の大きな近慣性内部波を観測するとともに、内部波に伴った強乱流層が100m程度の鉛直スケール、数10kmの水平規模の帯状構造を形成していることを詳細に観測し、近慣性内部波が海域で強い乱流混合を恒常的に発生させていることが初めて明らかになりました(図2)。
 この観測で得られた水深100-300mの乱流に伴う拡散効果を平均したところ、拡散係数で、10-4m2s-1を超える拡散が平均的に発生していることがわかりました。これは他の海域の10から100倍程度大きな乱流拡散です。また、この拡散係数は、これまでの研究で塩分の変質の長期データを用いて見積もられた本海域の拡散係数と同程度であることがわかりました。また、乱流の強かった100-300mでは、前述の黒潮栄養塩ストリームが海域を流れています。したがって、本海域で卓越して観測される近慣性内部波は、非常に強い乱流を亜表層で引き起こし、栄養塩を表層へ供給していることが推察できます。

【研究成果の意義】
 
本研究は、わが国沿岸を流れ漁業活動にも多大な影響を及ぼす黒潮上流での混合現象を広範囲にわたって定量し、そのメカニズムの解明に貢献するものです。このため、黒潮の生態系維持機構・変動機構の解明に重要な成果であると考えます。

【発表論文】
・タイトル
First Evidence of Coherent Bands of Strong Turbulent Layers Associated with High-Wavenumber Internal-Wave Shear in the Upstream Kuroshio
・著者
Takeyoshi Nagai (東京海洋大学) Daisuke Hasegawa (元東京海洋大学、現東北区水産研究所), Takahiro Tanaka (東北区水産研究所), Hirohiko Nakamura (鹿児島大学), Eisuke Tsutsumi (九州大学応用力学研究所), Ryuichiro Inoue (元東京海洋大学、現海洋研究開発機構), Toru Yamashiro(鹿児島大学)
・掲載雑誌
Scientific Reports, doi: 10.1038/s41598-017-15167-1
www.nature.com/articles/s41598-017-15167-1

Schematics.jpg

図1 本研究で観測された黒潮上流域沖縄トラフやトカラ海峡での近慣性内部波に関する種々のメカニズム模式図。観測された近慣性内部波は、以下の様なメカニズムで発生しうる。(1)本海域を流れる黒潮の蛇行による自励的発生。(2)黒潮が海底地形で生成。(3)半日周期潮汐が半日周期の内部波を生成し、それがPSIと呼ばれる三波共鳴現象によって近慣性周期の鉛直高波数の内部波を生成。(4)1日周期の潮汐による内部潮汐が、この緯度帯で近慣性周期の内部波として伝播。また、黒潮の存在によって、存在できる内部波の最長周期が変動し、内部波存在可能緯度も変形する。

TokaraADCPVMPFigColor.jpg

図2 トカラ海峡で観測されたA: 帯状構造を形成する近慣性内部波に伴う流速の鉛直勾配 [s-1]、B: 自由落下曳航式乱流微細構造観測装置によって観測した、帯状の強乱流混合層。色は乱流運動エネルギー散逸率 [W kg-1]

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