品川・越中島キャンパス大学院海洋科学技術研究科
大学院海洋科学技術研究科は、博士前期課程と博士後期課程の区分制博士課程とし、先端領域を切り拓く自立した高度専門職業人等を養成します。さらに、国立研究開発法人水産研究・教育機構、国立研究開発法人海洋研究開発機構、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所と連携して、教育研究の一層の充実と大学院生の資質向上を図っています。
【受賞・表彰】渡部礼音さん(修士1年)が、Marine Socio-Ecological Systems SymposiumにおいてECOP Awardを受賞しました。
2024年6月3日~6月7日にパシフィコ横浜にて開催されたMarine Socio-Ecological Systems Symposium(MSEAS)において、本学大学院生の渡部礼音さんがEarly Career Ocean Professional Award(ECOP Award)を受賞しました。
【受賞者】
渡部礼音(東京海洋大学 大学院海洋科学技術研究科 博士前期課程1年)
【受賞研究のタイトル】
The impact of environmental change on the rationality of the local farming ground allocation system: A case study in Japan(海洋環境の変化が漁場配分制度の合理性に与える影響:日本におけるケーススタディ)
【受賞研究の内容】
近年の気候変動に伴う海洋環境の変化への対応は、人類が取り組むべき共通の課題となっている。本研究では、近年漁場環境に急激な変化が生じている日本のカキ養殖産地を対象に、海洋環境の変化が漁場配分制度の合理性に与える影響を分析した。事前のヒアリング調査から、対象地域では、経験的にカキの成長が最も良いと考えられている漁場をメンバー全員に均等に配分するなど、経営規模の小さな漁業者に配慮した、独自の公平性の基準に則った漁場配分制度となっていることが分かった。そこで本研究では、漁場の環境調査とカキの成育試験を実施し、環境条件と実際のカキの成長をみることで、この漁場配分制度が現在も想定通りに機能しているかの検討を行った。その結果、環境条件が例年と大きく異なる年においては、コミュニティ内でこれまで最も良いと評価されていた漁場の生産性の低下などを受け、小規模な漁業者への配慮が打ち消されていることが明らかとなった。この結果は、経験に基づく地域の伝統的な漁業管理制度が、予期しない環境変化によって意図した機能を果たさなくなる可能性があることを示唆している。