国立大学法人 東京海洋大学

研究・社会連携産学・地域連携

東京海洋大学 海の研究戦略マネジメント機構について

海の研究戦略マネジメント機構では本学の研究活動の発展と、研究成果の社会実装を支援するための活動を行っています。そのために、学内に対しては研究成果の知的財産化・維持管理、生物多様性条約・ABS*対応、共同研究等の外部資金導入支援、競争的資金の獲得支援、産学官金連携の拠点整備、SDGs対応のための諸活動を行っています。学外に対しては、企業等からの技術相談受付窓口、相談内容に応じた研究者の提案・面談調整、研究企画・共同研究等契約締結支援、特許等の共同出願調整、競争的資金制度の紹介・申請支援等を行っています。

当機構では、これらの業務を行うためにURA室に専門人材を配置しており、業務内容によって知的財産・ABS対応部門、イノベーションハブ推進部門、サスティナビリティ推進部門の3部門を組織して対応し、品川キャンパス、越中島キャンパス、東向島(東京東信用金庫本店5 階/墨田区)のそれぞれにオフィスを構えて対応しています。また、水産海洋分野に特化した産学官・地域連携に従事する専門人材の育成やスキルの向上にも取り組んでいます。

さらに、本学の教育研究活動の活性化並びに総合的な研究開発に資することを目的として、先端科学技術研究部門(旧:先端科学技術研究センター)を設置し、先端的な教育研究プロジェクトを実施しています。

*Access and benefit sharing(遺伝資源の取得の機会とその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分)

(海の研究戦略マネジメント機構が関係する採択事業)

文部科学省大学知的財産本部整備事業採択(平成15~19年度) 文部科学省産学官連携戦略展開事業・戦略展開プログラム採択(平成20~24年度 後のイノベーションシステム整備事業) 文部科学省科学技術人材育成費補助事業「科学技術人材育成のコンソーシアムの構築事業」研究支援人材育成プログラム採択・(平成26年度~)

設置目的

  • 大学の知的財産の評価、出願、維持、研究推進活動における各種契約等支援、研修教育、人材育成とベンチャー起業・事業化推進支援
  • 大学の知的資源の活用による産学官連携の企画・推進と、産業界及び関連地域とのプロジェクト推進支援
  • 産学・地域連携に関わる各種業務や相談等のワンストップサービス、競争的資金の獲得支援、研究支援情報の収集・発信
  • 社会的課題を解決し、持続可能な社会の実現を目指す諸活動。
海の研究戦略マネジメント機構組織図

メタンハイドレート・メタンプルーム国産資源化プロジェクト

長い間取り組んできた夢、「メタンハイドレート・メタンプルームを実用化して日本を資源のある国にする」という願いがいよいよ実現へ動き始めています。

プロジェクトは3つが同時に走っています。

〇2016(平成28)年度から4年間、政府のメタンハイドレートの研究開発事業の一環として産総研(産業技術総合研究所)からの委託事業である「表層型メタンハイドレートの回収技術に関する調査研究」が実施され、6機関が本調査研究に取り組みました。この中で、青山千春(当時、東京海洋大学准教授。以下、青山)を研究代表者とする東京海洋大学チーム(九州大、新潟大、太陽工業株式会社と合同)は、膜構造物を利用した表層型メタンハイドレート回収技術の検討を遂行しました。
2019年度には、6機関が実施した調査研究を評価し有望技術を抽出するために、外部有識者による評価が実施されました。膜を用いることでメタンハイドレート回収時等に付随するガスの処理や海底環境への影響が低減できる可能性もあることから、「膜構造物の利活用」が共通基盤技術として特定され、2020(令和2)年度から3年間の予定で「表層型メタンハイドレートの回収・生産技術の研究開発 共通基盤技術開発」の段階にコマを進めています。

〇政府は、海底状況の調査としてメタンプルーム(粒状などのメタンハイドレートが海底から海中に湧き出している)の調査を2020(令和2)年度から本格的に実施しています。青山はアドバイザリーボードのメンバーとして調査の助言を行っています。

〇政府は、海底状況の調査としてメタンプルーム(粒状などのメタンハイドレートが海底から海中に湧き出している)の調査を2020(令和2)年度から本格的に実施しています。青山はアドバイザリーボードのメンバーとして調査の助言を行っています。

政府は2027(令和9)年度までに、メタンハイドレートに関する民間主導の商業化プロジェクトが開始されることを目指して技術開発を進めています。そして、カーボンニュートラル達成に向け水素やアンモニアの原料としても期待されており、カーボンニュートラルへの取組に関する国内動向の状況によっては、開発計画をさらに前倒しする可能性もあります。

ますます研究開発に拍車がかかりますから、国産資源化に向けた研究として、これからも政府の事業で取り組んでいる「表層型メタンハイドレートの回収・生産技術の研究開発」や、大学にて取り組んでいるメタンプルームの研究を引き続き進めていきます。

これらの研究活動により、本学の新学部である海洋資源環境学部がメタンハイドレートおよびメタンプルーム研究の学術的拠点となることに期待します。

漁業地域再生プロジェクト

漁業地域における、新たなニーズに対応したインフラの整備や地域 経済における水産物流通のグローバル化、並びに災害に対しても強いシステムの構築についての研究を実施していきます。
このプロジェクトは、関連団体・企業から寄せられた資金をもとに活動していきます。
プロジェクト担当教員 中泉 昌光 特任教授

参考:本学では、これまで「過疎・高齢化に対応した安全・安心を実現する漁港・漁村モデルの構築」(事業期間:平成25年4月~平成28年3月)に取り組んできました。これによって得られた成果も、本プロジェクトにつなげていきたいと考えています。

活動報告

プロジェクトでは、漁港漁場整備事業に関わる研究機関や民間企業らと連携しながら調査研究を進めるとともに、シンポジウムやセミナーなどの開催や講演等を通じて啓蒙普及に取り組んでいます。

主な活動

  • 長崎で渚泊をテーマに講演
  • 海外の漁港・魚市場ではICTを活用して市場取引するのが一般
  • "海と生きる"連続セミナーでの講演
  • 漁港・魚市場がICT活用で変わる
  • キックオフシンポジウムの開催
  • 韓国・釜山の港湾・魚市場の調査

国際航路協会PIANC 「漁港計画」作業部会WG224の活動

(活動概要)

1998年に、国際航路協会WG18 レポート「漁港計画」が策定され、国際的に唯一の漁港に関する技術基準として各国において活用されてきました。一方、この20年を超える期間における、水産業をめぐる情勢の変化やニーズの動向、技術の進展には著しいものがあり、こうした状況を踏まえて、WG224が設置され、内容の見直しとともに、その改訂作業が進められています。改訂作業への参加国は、英国、デンマーク、アイルランド、アイスランド、スペイン、ノルウェー、チリ、アルゼンチン、豪州、日本(中泉)、米国、南アフリカ、エジプトであり、欧州が多く、議長は英国である。

これまでWG会議は、昨年2月のキックオフミーティング以降、web形式により7回開催されています。現在は、今夏までに全章の1次ドラフトをまとめる方向で鋭意、原稿作成・議論を行っています。特に我が国のような包括的かつ細部に制度設計された法制度・事業制度、計画手法、並びに整備・管理事例を有する国は見当たらず、我が国の取組は「漁港計画」の策定に大きく寄与するものと言えます。他方、特に欧州は四半世紀前から衛生管理や資源管理、電子化に取り組んでおり、その道のりや成果は、我が国の資源管理へのシフトやデジタル戦略の参考になるものです。

今般のコロナ感染状況を見つつ、WGメンバー国における対面会議も検討しているところです。我が国としては、本漁港計画の策定における我が国の重要性とWG会議を通じたメンバーとの交流の意義に鑑み、我が国におけるWG会議の開催を企画しています。WGにおける活動、日本開催は、漁港や地域の発展のため、国際的枠組みを通じた我が国の貢献と地位向上に引き続き貢献するものです。(2022年7月3日)

(1次ドラフト)

共同研究・受託研究の成果報告書

「洋上風力発電水中音の水産生物影響及び計測方法の標準化に関する研究」

東京海洋大学海の研究戦略マネジメント機構は、令和2年度より2か年計画で弘前大学地域戦略研究所及び(株)アルファ水工コンサルタンツと標記テーマで共同研究を行っております。

(研究目的及び内容)
海底に着床式洋上風力発電施設を設置すると、基礎構造物に付着生物が出現し、それをベースに従来とは異なる食物連鎖が形成され、新しい生態系が構築されると言われております。一方で施工時の杭打ち、海底ケーブルの敷設による水中騒音や濁り、稼働時のタービンの海中音等が周辺に生息する魚類や底生生物、海藻類への影響が懸念されます。
そこで、大学の共同研究制度を活用し、情報の共有を図るとともに、水中音の水産生物への影響を明らかにします。また、今後全国沿岸での洋上風力発電導入における水中音の影響の適正な評価のため、計測方法の標準化に取り組みます。本共同研究の成果は、広く公表することとし、洋上風力発電施設の適切な導入と水産協調に向けた取組を後押しするものです。

  • システム導入の手引き
  • 定量的効果の分析および予測(事例)
  • 渚泊取組ガイドライン
  • 持続可能な組織・運営体制(事例)
  • 漁港水産物情報システムの概要
  • 先進地区における効果分析
  • 実証試験 他
  • 渚泊取組先進地域の分析
  • 渚泊推進対策事業地域の分析
  • 渚泊取組のシナリオ 他
  • 漁港の管理運営機能の向上におけるICT活用事例の分析
  • 漁場の管理運営機能の向上におけるICT活用事例の分析 他

海外の漁港・市場に関する調査研究の成果報告書

資源管理の下での欧州漁港・市場の管理運営について

我が国では、四半世紀前から欧州の衛生管理の取組みを参考に高度衛生管理型漁港・市場の整備と加工場のHACCP管理に取り組んできました。近年は水産物・食品の輸出が成長産業として位置付けられ、生産漁場・生産漁船、産地市場・陸揚げ場所、加工場のEUや米国のHACCP認証・登録が推進されています。他方、水産政策はIUU漁業対策や持続的な漁業の実現に向けた資源管理を中心に大きな転換点にあります。70年ぶりに漁業法が改正され、2020年12月に施行、本法に基づき水産資源管理を核とした新たな水産政策が始まりました。さらに2020年12月に、水産物の密漁防止を目的とした「漁獲証明制度」を創設する水産物流通適正化法化が成立し、公布日から2年以内に施行されることになっております。
産地・水揚げ地において漁獲証明制度の導入をいかに円滑に実施できるか、こうした資源管理制度が漁港・市場の管理運営の在り方にどのような影響を与えるか、あるいはどのような漁港・市場の管理運営の在り方が求められるのか。我が国との文化・商習慣の差違はあるものの、様々な対応策の選択肢の一つとして、欧州の漁港・市場における取組みは大いに役立つものと確信しております。本報告書は、現地調査をまとめただけの報告書ではなく、既往の文献や統計データを含めて我が国の「資源管理の下での欧州漁港・市場の管理運営」をテーマに研究した成果です。広く本報告書が活用されることを期待しております。

  • 国営企業による国内漁港・市場の一元管理運営
  • 市場取引の電子化
  • 品質・衛生管理、資源管理、トレーサビリティ
  • 自国市場で販売された商品の差別化プロジェクト
  • 漁港・市場の機分担と陸揚げ数量・金額および平均価格の維持・増大
  • フランスの漁港・市場の整備と管理運営の特徴
  • 市場取引の電子化
  • 品質・衛生管理、資源管理、トレーサビリティやサスティナビリティの取組
  • 漁港・市場の役割・機能の維持・拡大の取組
  • デンマークの漁港・市場の整備と管理運営の特徴
  • 市場取引の特徴
  • 資源管理下での品質・衛生管理、資源管理、トレーサビリティやサスティナビリティの取組
  • 整備と管理運営の効果
  • 英国の水産業・漁港
  • 市場取引業務における電子化・ネットワーク化
  • 資源管理下での品質・衛生管理、資源管理、トレーサビリティやサスティナビリティの取組
  • 上記取組の効果
  • イタリアの漁港・市場の配置計画と利用
  • 市場取引の特徴
  • 品質・衛生管理、資源管理、トレーサビリティの取組
  • 整備と管理運営の効果

シンポジウム、セミナーや講演会などで使用した資料

(開催日時)
2019年6月19日 15:00~16:00

(開催場所)
三会堂ビル9階 石垣記念ホール(都内)

(講演趣旨)
国際的な水産物需要の増大と輸出拡大が進む中で、漁港の生産流通拠点としての役割や機能の重要性はますます高まっている。これまで、安全で効率的に陸揚げや操業の準備・停泊ができる漁業基地としての整備や高度衛生管理型漁港の整備を推進してきたところであるが、さらに高い品質管理やトレーサビリティ、資源管理など国際的な課題への対応も求められている。他方、人手不足、技術者・技能者不足は、漁業地域において影響が著しく、漁港の整備や管理運営を通じて、これまで蓄積されてきた技術をいかに継承していくかが課題となっている。
そこで、漁港行政に長く携わってきた経験と、今般国内外の漁港についての調査研究に基づき、 水産物貿易の盛んな欧州において漁港はどのように計画、整備され、管理運営されているのか、我が国の漁港は国際的な視点でどう評価されるかなど、漁港の国際スタンダードについて講演を行った。

(講演録)
「漁港の国際スタンダード」講演録(1,349KB)

公益社団法人日本技術士会水産部会新春講演会

資源管理下で変わる漁港の電子化について~欧州と我が国の比較

(開催日時)
2022年1月8日 14:00~16:00

(開催場所)
港区機械振興会館6階会議室(Web配信併用)

(講演趣旨)
2018年に改正漁業法が成立し、2020年12月に施行され、水産資源管理を核とした新たな水産政策が進められている。資源管理の拠点として、トレーサビリティの起点として、漁港・市場の管理運営の在り方が求められている。人口減少・高齢化の進展に伴い我が国では労働生産性の向上など働き方改革が求められている。都市部と比較して、人口減少・高齢化の進展が著しい漁業や漁業地域においては、より重要な課題である。 四半世紀前、欧州の漁港・市場では衛生管理の取組みが行われ、こうした取組を参考に我が国は衛生管理に対応した漁港・市場の整備や管理を進めてきた。他方欧州では、厳しい資源状況が続く中、20年以上前から販売業務の電子化による省力・省人化、取扱量や価格の増大や、ICTを活用した資源管理・トレーサビリティに取り組んでいる。
本講演では、欧州と我が国の漁港・市場の生産性向上と付加価値化、資源管理等におけるICT活用の現状とその効果について調査分析した結果から、我が国における課題を明らかにする。

(講演資料)

調査研究の活動成果については、学会誌や関係団体で発行している雑誌にも掲載していますのでご覧ください。

中泉昌光:資源管理下での欧州漁港・市場の生産性向上と付加価値化におけるICT活用の現状と我が国の課題,土木学会海洋開発論文集Vol.78,No.2 2022.
中泉昌光:資源管理下での欧州漁港・市場の管理運営,公益社団法人 全国漁港漁場協会「漁港漁場」63巻第4号, 2021.
中泉昌光:資源管理下での欧州漁港・市場の管理運営(前号からの続き),公益社団法人 全国漁港漁場協会「漁港漁場」64巻第1号, 2022.
中泉昌光:働き方改革に向けた漁港・市場の生産性の向上におけるICT導入の効果分析,土木学会海洋開発論文集Vol.77,No.2 2021.
中泉昌光ら:産地市場における電子化の定量的効果分析-大船渡漁港を事例として-,日本水産工学会「水産工学」Vol.56 No.2(報文),pp.103-119,2019.
中泉昌光:デンマークにおける漁港・市場の整備と管理運営,一般財団法人漁港漁場漁村総合研究所「漁港漁場漁村研報」Vol.46(特別寄稿),pp.8-20,2019.
中泉昌光ら:Case Analyses in Start-up and Expansion of Homestay Tourism in Fishing Villages, Proceedings of the International Conference on Fisheries Engineering 2019, The Japanese Society of Fisheries Engineering, pp70-73, 2019.
中泉昌光ら:Quantitative Analysis of Computerization for Operations of the Fish Market - Case Analysis of Ofunato Fish Market -, Proceedings of the International Conference on Fisheries Engineering 2019, The Japanese Society of Fisheries Engineering, pp57-60, 2019
中泉昌光:英国の漁港における品質・衛生管理、市場取引.一般財団法人漁港漁場漁村総合研究所「漁港漁場漁村研報」Vol.45(特別寄稿), pp.8-19, 2019.
中泉昌光:漁村に泊まろう-渚泊の立ち上げと拡大について-.全国漁港海岸防災協会「はまべ交信」第27号(報文), pp.59-68, 2019.
中泉昌光:漁港(産地市場)の管理運営における電子化・ネットワーク化の方向について-欧州と国内の事例分析から-.一般社団法人 海洋水産システム協会「海洋水産エンジニアリング」第144号pp.25-39, 2019.
中泉昌光ら:漁港(産地市場)の管理運営におけるICT活用(国内外事例の分析より).日本水産工学会「水産工学」Vol.55 No.3(報文), pp.235-251, 2019.
中泉昌光:漁村の滞在型観光「渚泊」の意義と持続的・発展的な取組推進について.日本沿岸域学会「研究討論会2018講演概要集」 No.31, 2018.
中泉昌光ら:Study on the Functioning of Ports in Production and Logistics for Export Promotion of Marine Products. 国際航路学会PIANC 第34回国際会議, 2018.
中泉昌光:浜の賑わい(渚泊)の推進について.公益社団法人 全国漁港漁場協会「漁港漁場」60巻第1号(特集), pp.7-12, 2018.

これまでのシンポジウム等

サラダサイエンス(ケンコ-マヨネーズ)寄附講座

本講座は、ケンコーマヨネーズ株式会社からのご寄附により設置運営され、サラダを構成する食材や調味料について、栄養成分と呈味成分の化学組成、嗜好性に及ぼす要因、健全性などを評価し、サラダの調理加工特性、品質の保持ならびに制御、調味料との相互作用などのサラダに関する諸問題とこれらを解決するための先端技術についての研究を実施しています。

寄附講座教員

シンポジウムの案内

これまでのシンポジウム等

関連するサイト(外部サイト)

寄附者名 ケンコーマヨネーズ株式会社
設置部局・専攻 大学院海洋科学技術研究科 食機能保全科学専攻(博士前期課程)
設置期間 平成25年10月~令和6年3月
設置目的  サラダサイエンス寄附講座はケンコーマヨネーズ社からの寄附によって運営されている大学院博士前期(修士)を対象とする研究室です。 人々の食生活においてサラダは深く浸透して、色々な食の場面で登場し私たちを楽しませてくれます。さらに、美味しく身体にも良い面も喜ばしいところです。サラダサイエンス寄附講座では、食生活においてサラダの位置づけを社会科学と自然科学両面から見直して行こうとしています。すなわち、サラダは何かといった定義の問いかけの継続から、より良い食生活にとってサラダがいかなる形で関わるのかを自然科学の側面から研究する役割を担っていると考えます。
研究室教員 鈴木 徹 特任教授
李 潤珠 特任助教
教育研究領域  サラダに用いられる野菜や、魚貝類、海藻類などのシーフードは鮮度保持が難しく、食材や調味料との組み合わせによっても品質が大きく変化します。そこで、サラダに関連する食材や調味料等の品質向上、嗜好性、栄養機能、安全性の向上を目指し、化学的視点、または工学的視点からアプローチします。 具体的には、サラダまたはサラダを構成する食材や調味料について、栄養成分と呈味成分の化学組成、嗜好性に及ぼす要因、健全性などを評価し、サラダの調理加工特性、品質の保持ならびにその制御、調味料との相互作用などのサラダに関する諸問題とこれらを解決するための先端技術について教育研究を行います。 本講座は大学院講座ですが、毎年、食品生産科学科の4年生数名に対して卒論研究の指導も行います。 大学院サラダサイエンス専攻分野として「サラダサイエンス論Ⅰ」、「同 Ⅱ」の授業科目とともに、演習科目「食機能保全科学基礎論Ⅰ」および「同Ⅱ」(研究室間インターンシップ)を開講します。
研究内容  本年度の本寄附講座の研究テーマは、サラダの利用の広がりを目指して、新規食材開発、調理利用技術開発、嗜好性、栄養機能解明等を行う予定です。具体的には以下を予定しています。
  1. 社会科学的研究:サラダの食生活の中での意味、定義
  2. 人の嗜好とサラダ:温度と嗜好、色調と嗜好、サイズと嗜好
  3. 冷凍技術のサラダへの応用:非ブランチング冷凍野菜開発研究(ほうれん草、パプリカ、など食感冷凍復元性のよい野菜)
  4. 養殖サーモンの利用研究:燻製など、サラダ用素材としての利用
  5. レジスタントスターチ:馬鈴薯澱粉の難消化性加工、澱粉の糊化、老化などの研究
  6. GABAに関する研究:馬鈴薯、南瓜の中の増加方法研究
  7. カット野菜の残渣利用研究
  8. サラダの基本形である生食の利点を機能性の側面から検討する研究
研究室目標および研究活動 「自らの研究に誇りを持ち、冷静に研究を遂行する」 本寄附講座研究室はこの基本方針を掲げ、研究活動を次のように進めます。まず、実験を進めるにあたり、研究テーマの意義や将来展望を確実に理解するとともに、学術のみならず国内外の社会的情報を集め分析することとします。これにより、自らの研究テーマの社会的重要性を確認します。 次に、研究実験の中で途中経過の報告を通して当事者以外の判断も集めることとします。さらに、得られた結果は速やかに寄附者・学会・社会に報告することとします。学会発表および講演へは積極的に参加します。
研究の将来展望および社会貢献  本寄附講座の得られた研究成果から、サラダの調理法に新たな工夫が加えられたり、用いる食材が見直されたりする契機となることを期待して研究テーマを設けることとします。 本寄附講座はサラダを通じた食育の推進や環境の改善も図ることとします。食品科学分野の研究進展に寄与するのみならず、それら内容を深く理解周知、サラダ科学の深化発展に寄与できる人材を輩出することを目指します。