国立大学法人 東京海洋大学

ABOUT海洋生物資源学科について

近年、海洋生物は地球規模での環境破壊や気象変動、さらには乱獲により、多くの種でその資源が減少傾向にあります。この問題を解決するためには、海洋生物が作り出す生態系や、その体のしくみを理解し、これら生物の生育・増殖を人間が適切に手助けしていく必要があります。

海洋生物資源学科では、生態系のなかで生物多様性を保全しつつ、持続的に利用するための「生命科学」と「資源生物学」について幅広く教育・研究しています。その内容は遺伝子、細胞、個体、集団、生態系レベルまでを包括し、地球規模での海洋生態系・海洋生物に関わる諸課題の解決に立ち向かい、それに関連する科学・産業分野の先端領域を切り拓く意欲と能力を持つエキスパートを育成します。

CLASS4年間で学ぶ授業例

授業紹介

海洋動植物学実習(2年)
海洋生物の基本的な形態や構造を理解するとともに、それらを野外 で安全に採取する知識や技術を習得します。

水族養殖・育種学実習(3年)
ニジマスを材料に使って、卵や精子を実際に観察し、受精の基礎を学ぶと共に増養殖に必須の技術である人工授精を学生自身が体験します。さらに、遺伝子操作や生殖細胞操作といった最先端のバイオテクノロジー技法を習得します。

RESEARCH研究紹介

増殖生態学

水産資源と希少生物を保全する
変動する環境のなかで、水生生物はどのように影響を受けながら生活し、子孫を残しているのか。そして、水産資源や希少生物を維持・保全するためには、どのような方策が求められるのか。
私たちは、水生生物の保全・増殖を進めるための基礎として、人工繁殖技術の開発とともに、生活史初期の分散・回帰戦略、対捕食者戦略、および摂餌生態の解明に取り組んでいます。また、環境変動や地球温暖化が水生生物の繁殖や分散に及ぼす影響を予測・評価するための研究を行っています。
水槽内で人工繁殖させた頭足類、甲殻類、および貝類の卵と幼生

水族養殖学

養殖魚の耐病性メカニズムを解明する
養殖魚において、個体間の耐病性形質の違いをゲノム解析し、耐病性メカニズムの解明を行っています。
これまでに、個体の耐病性形質の有無を識別できる遺伝マーカーを開発し、その技術を使った“ 世界初” となる種苗を作出しました。このように、研究成果を活用し社会に還元・産業に利用するための研究を行っています。
今後は、耐病性責任遺伝子の探究から、野生集団の遺伝的多様性保全のための研究に展開したいと考えています。
野生アユを用いた耐病性ゲノム研究

生産システム学

絶滅危惧種のウミガメを守る
漁業において、対象としない生物種を誤って漁獲してしまうことを混獲(コンカク)と言います。私たちの研究室では、ウミガメや海鳥といった希少な生物の混獲を防ぐための手法の開発に取り組んでいます。
まぐろ延縄(ハエナワ)漁業では、ウミガメの混獲を防ぎながらマグロ類の漁獲を向上させる新しい漁具(中立ブイ・システム)の開発や、海鳥の混獲を防ぐために、釣針を早く沈められるような漁具の改良を行っています。
また、定置網漁業では、網に迷い込んで溺死してしまうウミガメを網の外へ逃がす手法(ウミガメ脱出支援システム)の開発を行うなど、絶滅危惧種の生物を守るために様々な混獲問題に取り組んでいます。
ウミガメ脱出支援システム

ゲノム科学

サメの力を利用する
魚類が生息する水中は、生物の生存を脅かすような病原微生物も含んでいます。そのような環境で、魚類は脊椎動物の中で最も繁栄した動物となりましたが、その繁栄には病気にならないための仕組みが大事であったと考えられます。
我々は、サメやチョウザメなどの魚が、他の魚がもつ病気にならない仕組みとは違うことを明らかとしてきました。
現在はこのような仕組みを理解し、様々な分野に応用する方法を研究しています。
チョウザメ

CAREER進路・就職

卒業後の進路

就職先

味の素、いであ、ANA フーズ、オリエンタル酵母、海洋高校(教員)、海遊館、カゴメ、葛西臨海水族園、キユーピー、極洋、栗田工業、グローブライド、 小林製薬、JF共済、島津製作所、商船三井客船、水産庁、水産研究・教育機構、都道府県水産試験場、東京久栄、東洋水産、ニチモウ、ニチレイフーズ、 日揮、日清丸紅飼料、日本ハム、日本IBM システムズ・エンジニアリング、日本食品分析センター、ニッスイ、ニップン、ハウス食品、マルコメ、 マルハニチロホールディングス、三井製糖、三菱商事ライフサイエンス、明治、モンベル、ヤクルト本社、ヤマサ醤油、山崎製パン、雪印メグミルク、 横浜・八景島シーパラダイス、理研食品、理研ビタミン、ロッテ 等

就職先業種

令和3年度卒業者産業別就職状況(%)
※進学等を除く学部卒業者の実績

POLICYポリシー

ディプロマポリシー(卒業認定・学位授与の方針)開く

1.卒業認定・学位授与⽅針

海洋⽣物資源学科では、海洋や湖沼、河川に⽣息する多種多様な⽣物を対象として、その⽣命機能、⽣物⽣産のメカニズムを解明し、⽣物資源を持続的に利⽤するための技術開発、資源管理に従事する専⾨技術者としての専⾨知識を有するだけではなく、⾷料、⽣命、環境に関する関⼼と社会の諸問題に対して、⾃ら考え、解決するための素養と能⼒を⾝につけた者に学⼠(海洋科学)の学位を授与します。

2.学修成果の到達⽬標

(1)専⾨的学識
 数学、⾃然科学に関する幅広い知識を基礎として、海洋を含めた⽔圏に対する科学的・⽂化的認識を深化させ、それらを⽣物資源の利⽤と保全について、応⽤・実践する能⼒を⾝につけている。
(2)豊かな国際性と幅広い教養
 語学⼒を含むコミュニケーション能⼒やプレゼンテーション能⼒、⾼い国際的・⽂化的教養を⾝につけている。
(3)⾃ら考え判断する能⼒
 ⽣物資源の利⽤・保全に関する課題解決に向けた⽅策を論理的に思考し、その応⽤と実践においては適切な判断⼒と社会に対する責任感を持って⾏動する能⼒を⾝につけている。
(4)現場で通⽤する実践⼒
 実験、実習や卒業研究などを通して得た専⾨知識・情報技術・能⼒を総合し、現場における諸問題をグローバルな視点も含めて、主体的かつ実践的に探究・解決・⾏動できる能⼒を⾝につけている。

カリキュラムポリシー(教育課程編成・実施の方針)開く

1.教育課程を編成するための⽅針

 海洋⽣物資源学科では、以下「2」に挙げる4つの素養と能⼒を⾝につけさせるため、「総合科⽬」、「専⾨導⼊科⽬」、「専⾨科⽬(コア課程⽬)」、「専⾨科⽬(アドバンスト課程科⽬)」を体系的に編成します。幅広く教養と語学⼒を⾝につけるための「総合科⽬」、幅広く基礎科学を学ぶ「専⾨導⼊科⽬」及び「専⾨科⽬(コア課程科⽬)」を設定し、専⾨分野の多様化・⾼度化に伴い、それを理解するために必要となる基礎⼒を充実させます。その上で、専⾨的な知識を「専⾨科⽬(アドバンスト課程科⽬)」で学ばせます。「専⾨科⽬アドバンスト課程科⽬」は本学科のあらゆる分野で基礎となる「アドバンスト課程科⽬(基礎科⽬)」を低年次で学んだ後、より深い学識を涵養し、専⾨的な能⼒を育成するための「アドバンスト課程科⽬(⽣命科学系)」及び「アドバンスト課程科⽬(⽣物資源学系)」で体系化して学び、⼤学院教育との接続を⾏います。さらに「グローバル・キャリア関連科⽬」により国際社会、産業界等の社会への接続をスムーズにします。

2.教育の内容及び教育の実施⽅法に関する⽅針

 授業科⽬区分として、「総合科⽬」、「専⾨導⼊科⽬」、「専⾨科⽬(コア課程科⽬)」、「専⾨科⽬(アドバンスト課程科⽬(基礎教育))」、「専⾨科⽬アドバンスト課程科⽬(⽣命科学系)」、「専⾨科⽬アドバンスト課程科⽬(⽣物資源学系)」、「グローバル・キャリア関連科⽬」を設け、講義、演習、実験及び実習を実施します。

(1)専⾨的学識
 本学科のあらゆる分野で基礎となる専⾨的な知識を学科の全ての学⽣に⾝につけさせるため、1年次〜3年次において「専⾨科⽬(アドバンスト課程(基礎科⽬))」を実施します。さらに、ゲノム、細胞、⽣物個体レベルでの⽣命現象をラボラトリー科学的⼿法で、環境と⽣物の関係、⽣態系の把握をフィールド科学的⼿法で、応⽤科学的な知識と⼿法を体系化したカリキュラムを、主に3年次において「専⾨科⽬(アドバンスト課程科⽬(⽣命科学系))、同(⽣物資源学系)」で開講します。学⽣は実験・実習・演習を通して、問題点の把握、対象⽣物の観察・解析・論理的考察の⼀連の過程を実際に経験すると共に、他者との協働やリーダーシップを学修させます。
(2)豊かな国際性と幅広い教養
 幅広い教養、論理的思考能⼒、⽂化的素養、国際的視野、コミュニケーション能⼒、プレゼンテーション能⼒を養うことを⽬的に、「総合科⽬」を実施し、また、英語資格試験・留学・キャリア形成それぞれに関連する「グローバル・キャリア関連科⽬」を実施します。専⾨科⽬を学ぶための基盤となる体系的な⾃然科学、数理科学、及び⼈⽂・社会科学の基礎知識、基礎的な情報技術を⾝につけさせるために、1年次と2年次で「専⾨導⼊科⽬」及び「専⾨科⽬(コア課程科⽬)」を実施します。
(3)⾃ら考え判断する能⼒
 様々な情報に基づいて⾃ら論理的に考察し的確に判断する素養と能⼒を⾝につけさせるために、「専⾨導⼊科⽬」、「専⾨科⽬」として演習、実験、実習及び4年次のセミナーと卒業論⽂を実施します。さらに、倫理的な判断を⾏える能⼒を⾝につけさせるために、4年次のセミナーの⼀部で研究者倫理に係わる教育を⾏います。
(4)現場で通⽤する実践⼒
 様々な状況において知識、データ及び情報技術を有効に活⽤し、それらを総合して海洋の現場で活かす応⽤⼒と実践⼒を⾝につけさせるために、4年次にセミナーと卒業論⽂を実施し、解決すべき課題の発⾒、解決に⾄る道筋の計画、計画に基づく実⾏と検証を⾏える能⼒の育成を図ります。また、国際社会、産業界等の社会への接続を円滑に⾏うために「グローバル・キャリア関連科⽬」を⾏います。

3.学修成果の評価⽅法に関する⽅針

 全ての科⽬において、試験、レポート、プレゼンテーション等で学修成果と到達⽬標の達成度を厳格に評価します。

アドミッションポリシー(入学者受入れの方針)開く

1.入学者受け入れ方針

 海洋生物資源学科では,沿岸から沖合,深海に加え,河川や湖沼に生きる生物を対象として,生態系のなかでの多様性を保全しつつ,これら生物を持続的に利用していくための海洋生物学,生命科学,資源生物学について幅広く教育・研究する。その内容は遺伝子,細胞,個体レベルから個体群,そして生態系レベルまでをカバーする。水に生きる動植物を守り,育むための生理学,病理学,遺伝育種学,バイオテクノロジー,生態学,資源学を学び,これらを技術として応用することに興味と意欲を持ち、ディプロマポリシーにおいて掲げる専門的学識、自ら考え判断する能力、豊かな国際性と教養、および現場で適用する実践力を卒業時までに修得することができる素養、能力を有する人を求める。

2.求める素養・能力

【専門的学識を修得するための素養・能力】
  • 入学後の学修に必要な幅広い基礎学力を有していること。とりわけ数学と理科(物理,化学または生物)の基礎学力を有していること(※)。
(※)数学については、数学Ⅰ、数学Ⅱ、数学A、数学B、数学C
物理については、物理基礎、物理
化学については、化学基礎、化学
生物については、生物基礎、生物
【自ら考え判断する能力を修得するための素養・能力】
  •  旺盛な学修意欲があり,海洋生物やそれを取り巻く環境に関する様々な課題に積極的に取り組むこと。また,常に視野を広め,上記課題について主体的に考え,それを解決するために行動する姿勢を持つこと。
【豊かな国際性と幅広い教養,現場で通用する実践力を修得するための素養・能力】
  •  海洋生物資源学科における大学生活を通じてコミュニケーション能力を高めること。また,異なる考え方や文化を尊重できる人材となること。さらに,海洋生物資源学科で学んだことを礎に,グローバル社会での活躍を目指すこと。

3.入学者選抜の基本方針,評価方法

【入学者選抜の基本方針】

 本学科での教育を受けるうえで必要な素養・能力を判定するために、以下の選抜を行う。

一般選抜(前期日程・後期日程)
  •  一般選抜(前期日程)では,基礎学力を幅広く身につけている人を選抜するために,大学入学共通テスト及び個別学力検査(数学・理科)の総合点で判定する。一般選抜(後期日程)では,基礎学力とともに,考えを論理的に展開し,適切に表現する能力を身につけている人を選抜するために,大学入学共通テスト(3教科4科目)及び個別学力検査(小論文)の総合点で判定する。
総合型選抜(A)
  • 小論文,聴講論文,個人面接,志望理由書及び調査書を通じて学科の学問領域に対する関心,学ぶ意欲,学ぶために必要な学力等を評価する。
総合型選抜(C,E)
  • 小論文,面接,志望理由書及び調査書を通じて学科の学問領域に対する関心,学ぶ意欲,学ぶために必要な学力等を評価する。
学校推薦型選抜(B)
  • 小論文,口頭試問,聴講論文,個人面接,志望理由書及び調査書を通じて学科の学問領域に対する関心,学ぶ意欲,学ぶために必要な学力等を評価する。
私費外国人留学生特別入試
  • 個別学力検査,面接,日本留学試験の成績,志望理由書及び調査書を通じて学科の学問領域に対する関心,学ぶ意欲,学ぶために必要な学力等を評価する。